目次
古い屋敷と奇妙な掛け軸
俺の祖父の家は、田舎にある大きな古い屋敷だった。
祖父が亡くなり、遺品整理のために親戚たちと屋敷を訪れたのは、ちょうど去年の秋のことだった。
埃っぽい屋敷の中を片付けていると、奥の座敷に妙な掛け軸がかかっているのを見つけた。
暗い夜道に、無数の小石が降り注ぐような光景が描かれていた。
「……変な絵だな。」
普通、掛け軸といえば山水画や仏画が多いはずだ。
なのに、そこに描かれているのは、ただひたすらに石が降り続ける夜の風景。
俺は気味が悪くなり、そっと掛け軸を巻こうとした。
その瞬間——
「触るな!!!」
背後から伯父の怒鳴り声が響いた。
「絶対に外してはいけない」
「お前、これは絶対に触るな。」
伯父は顔を真っ青にして、俺を睨みつけた。
「なんで? ただの掛け軸じゃないの?」
「これは……“暗夜の礫(あんやのつぶて)”の掛け軸だ。」
伯父の話によると、昔この屋敷に住んでいた先祖が何かを封じるためにこの掛け軸をかけたのだという。
「夜中に、この掛け軸の前を通るな。ましてや、絶対に外してはいけない。」
伯父はそう言い残し、座敷の襖を閉めた。
その晩、俺はどうしても気になってしまい、こっそり座敷を覗きに行った。
掛け軸の中で動く影
深夜、家族が寝静まったころ、俺はそっと座敷に向かった。
襖を開けると、掛け軸は変わらずそこにかかっていた。
「……ただの迷信だろ。」
そう思いながら掛け軸を見つめる。
その時だった。
掛け軸の中で——
何かが動いた。
最初は気のせいかと思った。
だが、よく目を凝らすと、暗夜の中に降り注ぐ礫(小石)の影が、少しずつ変化している。
いや、違う。
礫の隙間から、何かが覗いている。
黒い影のようなものが、暗闇の向こうからじっとこちらを見ている。
「……!!」
ぞっとして目をそらした瞬間——
部屋のどこかで、コツ……コツ……と石がぶつかるような音がした。
「……なんだ?」
辺りを見回したが、何もない。
しかし、その音は、確実に俺の足元に近づいてきていた。
「暗夜の礫」が降る夜
突然、背後から冷たい風が吹いた。
「外したな……?」
耳元で、掠れた声が囁いた。
「……っ!!」
慌てて振り向くが、誰もいない。
しかし、掛け軸を見ると——
そこにはもう、何も描かれていなかった。
夜の風景も、礫も、すべて消えていた。
ただ、壁の奥から微かに——
ザラ……ザラ……
小石が降り積もるような音が聞こえてきた。
俺は恐怖でその場を逃げ出した。
そして、掛け軸は戻る
翌朝、恐る恐る座敷を覗いた。
掛け軸は、元のまま掛けられていた。
ただし、一つだけ違う点があった。
昨日まで描かれていなかったはずの掛け軸の隅に——
「ひとり、足りない」
そう、かすれた文字が浮かび上がっていた。
伯父に話そうとしたが、何も言えなかった。
なぜなら、伯父は朝から姿を消していたからだ。
結局、伯父は二度と戻らなかった。
ただ、それ以来、夜中になると屋敷の奥から、小石がぶつかるような音が聞こえてくるようになった。
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