目次
序章──消えた猫
大学生の大輝(だいき)は、一人暮らしを始めて半年が経った。
古びたアパートだが、家賃は安く、静かで住みやすい。
ただ、最近少し気になることがある。
「……クロ、またいなくなったのか?」
近所の野良猫、黒猫のクロが、最近よく姿を消す。
三日ほど姿を見せなかったかと思うと、突然現れる。
「どこに行ってるんだか……」
そんなことを考えながら部屋に戻ると、玄関の片隅にある暗がりが、なぜか気になった。
小さなスペースなのに、奥行きがあるように見える。
「……気のせいか?」
軽く首を振り、気にしないことにした。
第一章──暗がりの奥
その夜、大輝は夢を見た。
暗闇の中、誰かが囁く声がする。
「……こっち……こっちに……」
目を凝らすと、あの玄関の暗がりが広がっていた。
だが、夢の中ではそれが異常に深く、奥へ奥へと続いている。
そして、何かが……じっとこちらを見ていた。
──ゴトッ。
「……うわっ!」
突然の音で飛び起きた。
部屋の中は静かだが、クロがいなくなった時と同じ空気を感じる。
玄関を見ると、あの暗がりが、まるでこちらを覗いているようだった。
第二章──クロが見つけたもの
次の日、クロが戻ってきた。
だが、いつもと様子が違う。
玄関の前で、じっと暗がりを見つめ、低く唸っている。
「おい、どうした?」
クロの視線を追うと……
──暗がりの奥に、黒い影がいた。
「……!」
それは、人間のような形をしているが、目も口もない。
ただそこにうごめいている。
大輝は息をのんだ。
暗がりの中から、それがじわじわと近づいてくる。
そして──
スッ……
影が、一瞬で暗がりの中へと消えた。
「……今の、なんだ?」
クロが低く鳴いた。
まるで「近づくな」と警告するように。
第三章──気づいてはいけなかった
それから数日、大輝は玄関の暗がりが気になって仕方なくなった。
影のことを考えるたびに、背筋がぞわりとする。
「……これ、どうにかしないと」
そう思い、試しにスマホのライトを当ててみた。
すると──
暗がりの中に、無数の手の跡が浮かび上がった。
「うわっ……!」
手は、内側から這い出ようとしているように見えた。
その瞬間、背後から囁く声がした。
「……見つけた……」
ゾクリと背筋が凍る。
そこに誰もいないのに、声だけが響いた。
慌てて振り返るが、誰もいない。
いや──
玄関の暗がりが、さっきより少し広がっているように見えた。
「……ここ、やばい」
大輝は荷物をまとめ、すぐに友人の家へ避難した。
終章──暗がりの行方
数日後、不動産会社に連絡し、別の物件へ引っ越した。
「……もう大丈夫だよな」
新居に落ち着き、玄関を確認する。
明るい照明の下、暗がりはない。
安心してスマホを開くと、通知が一件。
『画像が保存されました』
「え?」
開いてみると──
そこには、あの暗がりが写っていた。
奥に、無数の手が、こちらを招いていた。
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