目次
序章:古い井戸
田舎の祖父母の家には、古びた井戸 があった。
使われなくなって久しく、今では木の蓋がされている。
「子供のころから言われてたよな、『井戸の近くには行くな』って。」
大学生の 高橋悠斗(たかはしゆうと) は、幼馴染の 中村涼(なかむらりょう) とともに、久しぶりに祖父母の家に泊まりに来ていた。
「でもさ……なんでダメなんだろうな?」
涼が興味深そうに井戸を覗き込む。
「……覗くなって。」
悠斗が注意したその瞬間——
「……たすけて……」
井戸の底から、かすかな声がした。
第一章:誰かいる?
「聞こえたか?」
「お、おう……誰かいるのか?」
涼が声をかけるが、井戸の中は暗くて何も見えない。
「冗談だろ……?」
悠斗が震えながらスマホのライトを向けたが、底は見えなかった。
すると——
ギギ……ギギ……
蓋がわずかに動いた。
「……行こう。」
悠斗は背筋が凍るのを感じながら、涼を引っ張ってその場を離れた。
第二章:祖母の警告
その夜、悠斗は祖母に井戸の話をした。
「……あの井戸のことかい?」
祖母は表情を曇らせた。
「悠斗、あの井戸には昔、一人の女が落ちた んだよ。」
「え……?」
「随分昔の話さ。戦後間もない頃、貧しい暮らしに絶望した女が、赤ん坊を抱いたまま身を投げた。」
「……助からなかったのか?」
祖母は、ゆっくりと首を横に振った。
「それ以来、夜になると井戸の底から『助けて』と声がする って話が広まってね。」
悠斗は、昼間の出来事を思い出して血の気が引いた。
第三章:深夜の異変
深夜——
悠斗はふと目を覚ました。
「……涼?」
隣で寝ていたはずの涼がいない。
窓の外を見て、悠斗の心臓は止まりそうになった。
涼が、井戸の蓋を外そうとしている。
「おい、やめろ!!」
悠斗は慌てて外へ飛び出した。
「涼!! 何してる!?」
だが——
涼は、無表情のまま井戸の中を覗いている。
「……おいで。」
涼がそう呟いた瞬間、
井戸の中から、白い手が伸びた。
「!!!」
悠斗は全力で涼を引きずり倒し、井戸から引き離した。
涼はハッとした表情を浮かべると、青ざめながらこう言った。
「……引っ張られてた。中から。」
エピローグ:井戸の蓋
翌朝、祖母は井戸の周りに盛り塩 を置いた。
「……やっぱり、まだあの女はいるんだね。」
悠斗はそれ以上、何も聞けなかった。
井戸の蓋は、昨夜のまま少しだけ開いていた。
まるで、誰かが這い出ようとしたかのように——。
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