怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

小さなトンネルの先にいるもの 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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不気味な抜け道

俺の地元には、「くぐり道」と呼ばれる小さなトンネルがある。

正式な名称は知らないが、子供のころからそう呼ばれていた。

高さは大人の腰ほどしかなく、四つん這いにならないと通れない。

細い山道の途中にあり、抜けると近道になるため、近所の子供たちはよく通っていた。

ただし、夜は誰も近づかなかった。

「くぐり道で振り向くな」

「もし呼ばれても、絶対に返事をするな」

そんな言い伝えがあったからだ。

友人の挑戦

大学の夏休み、久しぶりに地元に帰ると、中学時代の友人・達也と再会した。

達也は肝試しが好きなタイプで、「久々にくぐり道に行ってみないか?」と持ちかけてきた。

「子供のころは怖かったけど、今なら余裕だろ?」

俺は少し気が乗らなかったが、結局付き合うことにした。

夜の山道を歩き、懐中電灯で照らすと、くぐり道の入り口が現れた。

昼間に見るとただのトンネルだが、夜は異様に暗く、何かが潜んでいるような雰囲気があった。

「俺が先に入るから、お前は後からな!」

達也は笑いながら、四つん這いになってトンネルに入っていった。

俺も後に続く。

狭い通路の中で、達也の背中を見ながら前進した。

トンネルの中はひんやりとしていて、湿った土の匂いが鼻をついた。

達也がポツリと言う。

「……なあ、なんか聞こえないか?」

「何が?」

「……子供の声みたいなの」

俺は耳をすましたが、何も聞こえない。

「気のせいじゃね?」

そう言った瞬間——

「おにいちゃん、あそぼ」

耳元で、はっきりとした子供の声がした。

振り向いてはいけない

ゾッとして、思わず振り向きそうになったが、昔の言い伝えを思い出した。

「くぐり道で振り向くな」

必死に前だけを見て、進み続ける。

だが——

「おい、達也、なんで止まってんだよ?」

前にいるはずの達也が、ピタリと動かなくなっていた。

「おい……?」

恐る恐る声をかけると、達也の体が、カタカタと震え始めた。

そして、かすれた声で言った。

「……俺の、背中に、誰か……いる……」

小さな手

次の瞬間、達也が叫び声を上げた。

「うわあああああ!!」

俺はパニックになりながらも、前へ前へと必死に進んだ。

ようやく出口が見えた。

達也が飛び出し、俺も続いて転がるように出た。

「おい、大丈夫か!?」

達也は震えながら、背中を何度も払っていた。

「何があった!?」

「……何かが、俺の背中にしがみついてた……」

「……何かって?」

達也は真っ青な顔で答えた。

「小さな手が、俺を掴んでたんだよ」

もう一つの出口

その後、俺たちは二度と「くぐり道」に近づかなかった。

後日、地元の古い記録を調べたところ、あのトンネルのもう一つの出口は、昔あった祠の跡地だったことが分かった。

そして——

「あの祠では、子供の霊を鎮めるための供養が行われていた」

という話を聞かされた。

子供たちが遊びの途中で迷い込み、帰れなくなった場所だったらしい。

「……もし、あの時振り向いていたら?」

俺はゾッとして、それ以上は考えないことにした。



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