俺には、どうしても説明できない昔の記憶がある。
親に話しても「そんなことあるわけない」と笑われるし、友達に話せば「夢だったんじゃない?」で片付けられる。
けど、どう考えても夢とは思えないほどはっきりしている記憶なんだ。
目次
幼い頃の奇妙な体験
たしか、俺が5歳くらいのときだったと思う。
当時住んでいたのは、田舎の小さな家で、周囲には古い神社や林が点在していた。
ある日、夕方になる前に一人で家の周りを歩いていたら、見覚えのない道に出たんだ。
「こんな道あったっけ?」
不思議に思いながらも、好奇心に駆られて進んでいくと、古びた木造の家がポツンと建っていた。
入り口には「入るべからず」と書かれた木札が掛かっていた。
それなのに、なぜか俺は迷いもせず、その家の中に足を踏み入れた。
家の中で見たもの
中はひどく埃っぽく、家具もほとんどなかった。
ただ、奥の部屋には妙なものがあった。
真っ黒な座布団の上に、白い着物を着た子供が正座していた。
顔が見えなかった。
そして、見たくないのに、どうしても目を逸らせなかったんだ。
子供はゆっくりと顔を上げ、俺のほうを見た。
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
次に気がついたとき、俺は家の玄関先で座り込んでいた。
母親が心配そうに覗き込んでいて、
「どこに行ってたの? ずっと探してたのよ!」
と怒りながら泣いていた。
けど、不思議なことに、俺はどこに行っていたのか答えられなかった。
家の場所も思い出せないし、何があったのかも説明できない。
ただ、あの「顔を上げた瞬間」の記憶だけが、鮮明に焼き付いていた。
確かにあったはずの家
それから十数年が経ち、大人になった俺は、ふとあの日のことを思い出して、実家に帰ったときに母に聞いてみた。
「昔、変な家の近くで迷子になったことあったよね? あの家、今もあるのかな?」
母は不思議そうな顔をして答えた。
「え? そんな家、このあたりにはないわよ?」
俺はぞっとした。
たしかに、あの家があった場所に行こうとしても、道すら見つけられない。
まるで最初から存在しなかったかのように。
ただ、俺の記憶には、いまだにあの家の中の景色と、あの子供の顔を上げる直前の姿がはっきり残っている。
あの子が顔を上げたとき、俺は何を見たんだろう。
そして——もし、もう一度あの家を見つけてしまったら……今度こそ、戻ってこられないんじゃないか。
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