目次
奇妙な写真
大学で天文学を学んでいる友人の佐々木が、ある日妙な写真を見せてきた。
「これ……おかしくないか？」
それは、彼が天体観測用の望遠鏡に接続したカメラで撮影した月の写真だった。
満月の表面には、クレーターや影がくっきりと映っている。だが、よく見ると……。
黒い何かが、月の縁に立っている。
それは人のようにも見えたが、形がぼやけている。影ではない。むしろ、"そこにいる"ようだった。
ありえない存在
「カメラのレンズの汚れかと思った。でも、何度撮り直しても同じ位置にこれが映るんだ」
佐々木は冗談めかして笑ったが、その目は明らかに怯えていた。
「……月の裏側に何かいるんじゃないか？」
月は常に地球に同じ面を向けている。裏側は直接見ることができない。
しかし、もし——"何か"がそこにいたとしたら？
繰り返される視線
その夜、俺はなんとなく月を見上げた。
澄んだ夜空に、丸く輝く満月。
じっと見ていると、ふと奇妙な感覚がした。
——見られている。
だが、周囲には誰もいない。ただ、月だけがそこにある。
それから数日後、佐々木が体調を崩した。
「最近、よく夢を見るんだ……。満月の夜になると、誰かが俺を見下ろしている夢」
「誰か？」
「わからない。でも、そいつの顔がだんだんはっきりしてきてる……次の満月の夜に、きっと……」
消えた友人
そして、満月の夜。
佐々木は消えた。
大学にも家にもいない。連絡もつかない。
警察が捜索を始めたが、彼の姿はどこにもなかった。
唯一残されていたのは、彼の部屋にあったパソコンの画面。
そこには、満月の写真が映っていた。
そして、その写真の端に——
黒い人影が、こちらをじっと見ているように映っていた。
今も月を見上げると
佐々木は、今も見つかっていない。
だが、満月の夜。俺はふと夜空を見上げる。
そして、月をじっと眺めると——
そこに、誰かが立っている気がするのだ。
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