目次
深夜の異変
深夜2時。
会社帰りの矢野(やの)は、アパートの前でふと空を見上げた。
そこには、雲ひとつない夜空に浮かぶ、美しい満月があった。
「今日はやけに月が綺麗だな……」
スマホを取り出し、月を撮影しようとカメラを向ける。
しかし——
画面には、何も映らなかった。
「え?」
何度撮り直しても、月が映らない。
カメラの不調かと思い、試しに手元を撮ると、ちゃんと自分の手は映る。
しかし、もう一度月に向けると——
やはり、何も映らない。
「……おかしいな」
不安になりつつも、その日は特に気にせず部屋へ戻った。
しかし、この時点で矢野はすでに「何か」に気づいてしまっていたのだ——。
消えた満月
翌日、矢野は会社の同僚に昨夜の出来事を話した。
「スマホのカメラがおかしくなったのか、月が撮れなかったんだよ」
すると、同僚の佐藤(さとう)が怪訝な顔をした。
「え……? 何言ってんだ、お前」
「どういう意味だ?」
「だって、昨日は月、出てなかっただろ?」
「……は?」
矢野はスマホで昨夜の天気を調べた。
そこには、こう書かれていた。
『昨夜の天気:曇り時々雨』
『月は一晩中、雲に隠れて見えませんでした』
「……そんなはずはない……確かに、俺は見たんだ……!」
しかし、佐藤は冷静に言い放った。
「お前が見たのは本当に月だったのか?」
その言葉に、矢野はゾッとした。
月の裏側
その晩、矢野は確かめるために、また夜空を見上げた。
しかし、その日は確かに月は出ていなかった。
「やっぱり気のせいだったのか……」
そう思いながら、部屋へ戻ろうとした——その時。
真上から視線を感じた。
恐る恐る空を見上げる。
そこには——
昨夜と同じ場所に、満月が浮かんでいた。
しかし、よく見ると——
月の表面に、無数の「目」があった。
それらの目が、一斉に矢野を見下ろしていた。
「ッ!!!」
矢野は、叫び声を飲み込んだ。
足が震え、体が動かない。
その時、スマホの画面が勝手に点灯した。
画面には、知らない番号からのメッセージが届いていた。
『今すぐ家に入れ』
矢野は反射的に駆け出し、部屋に逃げ込んだ。
扉を閉め、カーテンを引く。
心臓の鼓動がうるさいほど響く。
「……今のは……何だったんだ……?」
スマホを見ると、メッセージはすでに消えていた。
月を見た者の運命
翌朝、ニュースで不可解な事件を知った。
『昨夜、都内で男性が突然失踪』
記事には、失踪した人物の名前があった。
──佐藤
「……まさか……」
急いで佐藤のLINEを開いた。
すると、未読のままのメッセージが一通だけ残っていた。
『月を見たか? なら、もう遅い』
『あれは、"月の裏側"にいるものだ』
矢野の背筋が凍った。
その瞬間——
カーテンの隙間から、月が覗いていた。
その表面に、無数の目が蠢いていた。
そして——
その目のひとつが、笑った。
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