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梅雨の足音──ぬかるんだ道に響く奇妙な音 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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梅雨の帰り道

梅雨の時期、雨は降ったり止んだりを繰り返し、地面はすっかりぬかるんでいる。

その日、俺は傘を差しながら、いつもとは違う近道を通って帰ることにした。

古い神社の裏手を抜ける細道。ぬかるんだ土が靴にまとわりつき、不快な感触がする。

ぐちゅ……ぐちゅ……

靴が泥を踏みしめる音だけが響く。

こんな道を選んだことを少し後悔しながら、足早に進んでいると——

コツ……コツ……

不自然な足音が聞こえた。

「……?」

俺は立ち止まった。

雨上がりのぬかるんだ道なのに、聞こえるのはまるで乾いた石畳を歩くような足音だった。

コツ……コツ……

一定のリズムで近づいてくる。

「誰かいるのか?」

振り返ったが、誰の姿もない。

乾いた足音

もう一度、歩き出す。

ぐちゅ……ぐちゅ……

だが、それに重なるように——

コツ……コツ……

まるで、誰かがすぐ後ろで違う場所を歩いているような音。

泥道でそんな音がするはずがない。

俺はふと、自分の影を見た。

影が、俺のものだけじゃない。

薄暗い雨雲の下、淡く揺れる影が、俺のすぐ横にもう一つあった。

だが、そこには何もいない。

道が変わる

「……おかしい」

足を止めて、もう一度後ろを振り返る。

そして気がついた。

さっきまで泥道だったのに、いつの間にか乾いた石畳の道になっている。

ぬかるんだはずの地面は、しっかりとした硬い感触に変わっていた。

「え? こんな道だったか……?」

見覚えのない石畳の道の先に、ぼんやりとした人影が見えた。

和服のようなものを着ている。

ゆっくりと歩いているその影の足元から、コツ……コツ……と音が響く。

「誰……?」

俺がそう呟いた瞬間——

影が、消えた。

同時に、足元の感触が戻る。

ぐちゅ……ぐちゅ……

泥道だった。

俺は心臓が止まりそうになった。

ぬかるんだ道の記憶

それから俺は、できる限り足を速めて家に帰った。

次の日、家でこの話をしたところ、祖父が妙なことを言った。

「お前、その道……昔は石畳だったんだぞ。戦時中に焼けて、今は泥道になっちまったがな」

「……え?」

「その道を通ると、昔の人の足音が聞こえるって話、昔からあるんだよ」

祖父はそれ以上話そうとしなかったが、俺には確信があった。

俺が聞いたあの足音は、この場所に残された記憶だったのだろう。

梅雨になるたび、俺はあの日の足音を思い出す。

そして今でも、あの道を通ることはない。



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