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梅雨の足音 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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ぬかるんだ道

梅雨の長雨が続く中、高橋(たかはし)は最寄り駅からの帰り道を歩いていた。

会社からの帰宅途中、小道を抜けるのがいつものルートだった。

しかし、この道は雨が降るとぬかるみやすい。

「うわ、やっぱりグチャグチャだな……」

水をたっぷり含んだ土が靴にまとわりつく感触が気持ち悪い。

歩くたびに、ぐちゃっ、ぐちゃっと嫌な音がする。

街灯も少なく、ぼんやりとした光の下で道が続いている。

誰もいない——はずだった。

乾いた足音

ぬかるみに足を取られながら歩いていると、不意に背後からカツ、カツ、カツという足音が聞こえた。

「……?」

立ち止まり、耳を澄ます。

この道は完全に泥だらけだ。

普通なら、自分のようにぐちゃぐちゃとした音が鳴るはず。

なのに——

その足音は、まるで乾いたアスファルトの上を歩いているかのようだった。

カツ、カツ、カツ……

革靴のような、固い靴底の音。

けれど、振り返っても誰もいない。

気のせいかと思い、再び歩き出す。

しかし——

カツ、カツ、カツ……

まるで、自分の歩調に合わせるように、背後からその足音が響く。

近づく気配

怖くなって、足を速める。

ぐちゃっ、ぐちゃっ、とぬかるみに足を取られながら進む。

しかし、足音は変わらず一定のテンポでついてくる。

カツ、カツ、カツ……

それどころか——

徐々に近づいてきている。

「……っ!」

思わず駆け出した。

ぬかるみで靴が滑りそうになりながらも、必死で走る。

だが、足音は変わらない。

一定のリズムで、すぐ後ろまで迫ってきている。

こんな泥だらけの道で、乾いた音を鳴らしながら歩けるはずがない。

それなのに——

まるで背後の誰かだけ、別の道を歩いているかのように、軽快に足音を響かせていた。

足音の正体

必死で走り続け、ようやく明るい通りに出た。

振り返る。

……誰もいない。

辺りは静まり返っている。

なのに、耳にはまだカツ、カツという足音がこびりついていた。

「……気のせい、だったのか?」

安堵しながら、ふと自分の靴を見た。

ドロドロに汚れ、泥水が滴っている。

だが——

後ろを振り返ると、ぬかるんだ道に残っているはずの自分の足跡しかない。

「……いや、待て」

背筋が凍る。

確かに足跡はある。

しかし——

自分の足跡は、ぬかるみに深く沈み込んでいるのに対し、すぐ後ろには"乾いた靴底"の跡がくっきりと続いていた。

泥に沈むことなく、まるで固い地面を歩いていたかのように——。

「……あれは、本当に"誰か"だったのか……?」

梅雨の雨音に紛れるように、遠くでまた——

カツ、カツ、カツ……

と、乾いた足音が響いていた。



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