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火がつかない夜──消えた焚き火の謎 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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消えた炎

大学のアウトドアサークルで、俺たちは山奥のキャンプ場に来ていた。

「よし、そろそろ焚き火を始めるか」

メンバーは5人。俺、吉川、佐々木、田中、そしてリーダーの杉本。

山の夜は冷える。焚き火の温もりが恋しくなる時間だった。

だが——

火がつかない。

吉川がライターで薪に火をつけようとするが、全く燃え広がらない。

「おかしいな……薪が湿ってるわけじゃないのに」

杉本が新品のマッチを擦る。火がつく——しかし、一瞬で消えた。

試しにガスバーナーを近づける。ゴッと炎が出たが、まるで何かに吸い込まれるように消えた。

「……こんなの、あり得るか?」

俺たちは困惑した。

「変だな。とりあえず、温まるために車に戻るか」

杉本が言ったその時——

ゴォォォ……

遠くの林の奥で、突然、炎が上がった。

誰が焚き火をしているのか

「おい、誰かいるぞ!」

林の奥で、不自然に揺れるオレンジ色の光。

「こんな時間に?」

俺たちがいるキャンプ場は、予約制の貸し切りサイトだ。他に利用者がいるはずがない。

「管理人が様子を見に来たんじゃないのか?」

「いや、それにしては妙だ。あんな奥に……」

「確かめに行くか?」

俺たちはためらったが、寒さに耐えきれず、その光の方へ歩き出した。

だが、近づくにつれ、違和感が増していった。

焚き火の匂いがしない。

炎が揺れているのに、熱が感じられない。

そして——

そこには、誰もいなかった。

あり得ない焚き火

火は確かに燃えているように見えた。

しかし、近づいても熱がない。焚き火の音もしない。

「何なんだ、これ……」

吉川が恐る恐る手を伸ばした。

その瞬間——

フッ……

火が、一瞬で消えた。

次の瞬間、真っ暗な林の中に、かすかな声が響いた。

「火を……消すな……」

俺たちは凍りついた。

「今、誰か喋ったか?」

「違う……後ろから聞こえた」

後ろを振り向くと、今来た道が見えなくなっていた。

周囲は黒い闇に包まれ、さっきまでいたキャンプサイトの光も、車も、すべて消えていた。

「やばい……帰れなくなった……?」

「落ち着け! スマホのライトを——」

田中がスマホを取り出すが、画面が真っ黒のまま動かない。

その時——

ゴォォォ……!

今度は俺たちの足元で炎が上がった。

「うわああっ!」

俺たちは後ずさったが、その炎は俺たちを包み込むように広がっていった。

しかし——

やはり熱くない。

ただ、炎の中に何かが見えた。

黒く焼け焦げた無数の人の顔が、ゆらゆらと揺れていた。

過去の火事

「やばい、これ、普通じゃない!」

「とにかく逃げろ!」

俺たちは手探りで林を駆け抜けた。

やがて、霧が晴れるように目の前が開け、キャンプ場のサイトに戻ることができた。

車もある。

ただ、焚き火の跡だけが、一面の灰になっていた。

「あの火……何だったんだ……」

震える声で佐々木が呟く。

杉本が何かを思い出したように言った。

「このキャンプ場、昔、大火事で死者が出たって話を聞いたことがある……」

「なんだって?」

「管理人が言ってたんだ。数十年前に、火が消えなくなって、逆に全部燃えてしまったらしい。それ以来、ここでは火がつかないことがあるって」

「それ……早く言えよ……!」

俺たちは震えながら車に乗り込み、二度とその場所に戻ることはなかった。

ただ、今でも時々——

あの林の奥に、誰もいないはずの焚き火の光が揺れているらしい。



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