目次
町外れの「危険な溝」
俺が子供の頃に住んでいた町には、決して近づいてはいけない溝があった。
場所は町外れの古い道路の脇。
深くえぐれたような形をしたその溝は、どれほど雨が降っても水が溜まることはなく、常に真っ黒な闇が広がっていた。
町の大人たちは、「あそこには絶対に近づくな」と口を揃えて言った。
理由を聞いても、誰も教えてくれなかった。
でも、子供というのは「ダメ」と言われるほど興味を持ってしまうものだ。
友人の挑戦
ある日、友人のタカシが言った。
「なあ、一回くらい見てみても平気だろ?」
「やめとけよ、なんか気味悪いし……。」
「ビビってんのか? 俺、覗いてみるわ。」
そう言って、タカシは溝の縁にしゃがみこみ、ゆっくりと中を覗き込んだ。
その瞬間、タカシの顔色がみるみる青ざめていった。
「……え?」
「何が見えたんだよ?」
俺がそう聞くと、タカシはガタガタと震えながら立ち上がり、何も言わずに走り去った。
残された俺は不安になりながらも、怖くて溝を覗くことはできなかった。
タカシの異変
次の日から、タカシは学校を休んだ。
家に電話をかけても、母親が「今は会わせられない」と言うだけ。
1週間ほど経った頃、ようやく学校に来たタカシは、すっかり別人のようになっていた。
顔はやつれ、目の下には深いクマ。
何より、あんなに元気だったのに、ほとんどしゃべらなくなった。
俺が「溝の中に何があったんだ?」と聞いても、タカシはただ首を振るだけだった。
大人になってからの真実
それから数十年が経ち、俺はふとあの「危険な溝」のことを思い出した。
地元に戻った際に、昔から住んでいる近所の老人に尋ねてみた。
「あの溝、昔から気味悪いって言われてましたよね?」
すると老人は、しばらく考え込んだ後、小さな声でこう言った。
「あそこはな……昔、人が落ちたまま見つからなかった場所なんだよ。」
「え……?」
「何人か落ちたらしいが、どれも遺体が見つからんかった。」
背筋がゾクリとした。
溝の深さはせいぜい1メートルほどのはず。
それなのに、落ちた人が消える?
「だから、覗いた者は引きずり込まれるってな……。」
その言葉を聞いて、俺はハッとした。
タカシはあの時、何かに引き込まれそうになったのではないか?
それをギリギリのところで逃れたからこそ、あんなに怯えていたのではないか?
俺は震える手を握りしめながら、絶対にもうあの場所には行かないと誓った。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み

1冊115円のDMMコミックレンタル!

人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】

人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】

ロリポップ!

ムームーサーバー

新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp


![]() | 新品価格 |

![]() |

![]() | ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |

