目次
禁じられた山
俺の祖父の家は、山間の小さな村にあった。
子供の頃、夏休みになると毎年のように遊びに行っていたが、そこには決して入ってはいけない山があった。
村の年寄りたちは皆、その山を「山神様の領域」と呼び、こう言い聞かせた。
「あの山に足を踏み入れたら、命を取られるぞ」
子供ながらに怖くて、俺も友達も絶対に近づかなかった。
だが、一度だけ──俺はその山に足を踏み入れてしまった。
山で出会ったもの
小学六年の夏。
友達と遊んでいるうちに、いつの間にか禁じられた山の近くまで来てしまった。
ふと足元を見ると、小さな石の祠があった。
風化していて読めないが、何かが彫られている。
「これ、もしかして山神様のやつじゃね?」
友達が冗談交じりに言う。
「やばいって! 早く戻ろうぜ。」
俺はそう言ったが、その時、背後からざわ……ざわ……と木々が揺れる音がした。
風は吹いていない。
「おい、なんか変じゃねぇか?」
友達が不安そうに言う。
その瞬間、背後の木々の間から、何かがこちらを見ていた。
──人の形をしているが、異様に背が高い。
顔が……ない。
俺たちは悲鳴を上げて、一目散に村へと走り出した。
村の掟
村に戻り、息を切らしながら祖父に話すと、顔を真っ青にして怒鳴られた。
「お前、何を見た!?」
「……なんか、変なもの……。」
祖父はしばらく考え込んだ後、小さくうなずいた。
「今夜は外に出るな。絶対に、どんな音がしてもドアを開けるな。」
そう言い残し、祖父はどこかへ消えていった。
夜の訪問者
その夜、布団に入っても、全く眠れなかった。
すると──午前2時頃。
コン……コン……
玄関を叩く音がした。
「……じいちゃん?」
小声で呼んだが、返事はない。
コン……コン……
ゆっくりと、規則的に叩かれる音。
まるで、「出てこい」と言わんばかりに。
布団をかぶり、ひたすら朝が来るのを待った。
祖父の話
朝になり、祖父が戻ってきた。
俺はすぐに昨夜のことを話した。
祖父はため息をつき、ぽつりと言った。
「お前……山神様に見られたな。」
「見られた?」
「あの山にはな、人ならざるものが住んでいる。お前はそいつに目をつけられたんだ。」
「……どうすればいい?」
祖父は黙って、懐から小さな紙を取り出し、俺のポケットに入れた。
「これを持って帰れ。肌身離さず持て。」
そして、こう続けた。
「もし夢にあの山が出てきたら、その時はもう助からん。」
その後
俺は何事もなく村を離れ、大人になった。
しかし、今でも時々思い出す。
あの山で見た、顔のない何か。
そして──夜に響いた、あの規則的なノックの音。
俺はまだ、山神様に見られているのだろうか……?
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