目次
忘れられた祠
大学の民俗学ゼミに所属する俺たち四人は、ある夏休み、教授の紹介で地方の山奥にある小さな村を訪れた。目的は、村に伝わる「玉響神(タマユラノカミ)様」に関する伝承を調査することだった。
玉響神とは、「一瞬の光や音に宿る神」とされる存在で、村人たちは昔からこの神を畏れ、決して名前を軽々しく口にしてはいけないと言い伝えられていた。
村の長老に案内され、山の奥にある古びた祠(ほこら)へと向かった。木々に覆われ、今にも崩れそうなその祠には、小さな木札がかけられていた。
《決して扉を開けるな》
だが、俺たちは何の気なしに、その扉をほんの少しだけ開けてしまった。
変わりゆく世界
その日から、俺たちの周囲で妙なことが起こり始めた。
まず、ゼミのメンバーの一人、田村が言った。
「昨日、部屋で変な音がしたんだよ。チリン……チリン……って、風鈴みたいな音がずっと鳴ってた」
次に、吉川が話した。
「俺もだ。夜中に目が覚めたら、窓の外で、誰かがこっちを見てた」
俺も違和感を覚えていた。視界の端で、一瞬だけ誰かが立っているように見える。 けれど、そちらを向いた瞬間には、何もいない。
——まるで、誰かが「玉響(たまゆら)」のように一瞬だけ現れては消える かのようだった。
玉響神の祟り
数日後、ゼミのリーダーである篠崎が突然、大学を休んだ。気になって家を訪ねた俺たちは、彼の部屋で異様な光景を目にすることになる。
篠崎の部屋の中——
無数の白い手形が、天井や壁一面に浮かび上がっていた。
部屋の中央には、怯えきった篠崎がうずくまっていた。
「聞こえるんだ……あの音が……チリン、チリン……玉響神様が、来る……来る……」
その晩、篠崎は行方不明になった。警察に捜索願を出したが、彼の姿はどこにもなかった。
翌日、村の長老から電話があった。
「扉を開けただろう……? それは、決して許されないことなのだ。」
扉を閉じる
長老の指示のもと、俺たちは再び村へ向かった。
そして、祠の前に立つと、俺たちはそこで見てしまった。
——扉の隙間から、無数の白い手がこちらを掴もうと伸びているのを。
俺たちは震える手で、そっと扉を閉じ、封印を元に戻した。
その瞬間、あの「チリン……チリン……」という音が止み、辺りは静寂に包まれた。
祟りの行方
それから数年後、俺たちはあの日のことを語ることはなくなった。
篠崎の行方は、今も分からないままだ。
ただ、一つだけ妙なことがある。
鏡を見るたび、俺の背後に、一瞬だけ「何か」が映るのだ。
それは、見間違いだろうか——
それとも、玉響神様がまだ俺たちを見ているのだろうか——
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