目次
スキー旅行のはずだった
大学時代の仲間4人で、久しぶりにスキー旅行へ行くことになった。
メンバーは俺、リョウ、サトル、マユ。
場所は、長野の山奥にある旧スキー場跡地。
営業終了してから数年経っていたが、今も地元の人がたまに滑っている穴場スポットらしく、安く泊まれるロッジも見つけてノリで決めた。
「人が少ないって、最高じゃん」
そう思っていたが、それが間違いだった。
誰かが滑っていた?
1日目、俺たちはゲレンデ跡を貸し切り状態で滑った。
雪質も良く、天気も申し分なし。
だが、昼過ぎ頃、サトルが奇妙なことを言い出した。
「なあ……さっきから、俺たち以外にも滑ってる奴いない?」
「え? 他に客いなかっただろ」
「だよな。でも、あのトラック……」
サトルが指さす先、林の奥に続くスキーの跡があった。
1本の滑走ラインが、急斜面を滑るようにして木々の中へと続いている。
「……不気味だな」
誰もその跡を追おうとは言わなかった。
失踪
その夜、ロッジで鍋を囲みながら談笑していたとき——
「……リョウがいない」
トイレに行ったきり、30分以上戻ってこなかった。
辺りを探したが、ロッジにも、外にもいない。
焦ってゲレンデの方まで出ると、月明かりの中にリョウのスキートラックが一対だけ残っていた。
ただし、下る跡しかない。
登った形跡も、リフトもないその場所に、降りた跡だけがある。
しかも——
そのラインは、昼に見た林の中のトラックと同じ場所へ続いていた。
林の奥にて
警察に通報したが、夜の捜索は危険だと翌朝に持ち越された。
だが俺たちは待てなかった。
翌朝早く、3人で林の中のスキートラックを辿ることにした。
森の中は異様に静かで、鳥の鳴き声すらしない。
「……あった」
林の奥に、小さな古びた山小屋が見えた。
その手前で、リョウのスキー板が突き刺さるように雪に立っていた。
小屋の扉を開けると——
誰もいなかった。
だが、中の壁にはこう書かれていた。
「スキーの跡をたどってはいけない」
「戻る者は、いない」
背筋が凍った。
その瞬間、遠くからカラン……カラン……と何かが転がる音が聞こえた。
振り向くと、1本のスキー板が、林の奥へとすべるように転がっていった。
それは、リョウのものだった。
戻らない跡
警察の捜索でもリョウは見つからなかった。
雪に残るスキートラックは、林の奥で突然消えていたという。
「まるで、雪が飲み込んだように」と捜索隊員は言った。
あれ以来、俺たちはスキーに行っていない。
ただ時折、雪が積もった日には思い出す。
誰もいないはずの場所に、片方だけのスキー跡が続いているのを見たという話を。
そして——それを追った者は、誰一人戻ってこないという噂を。
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