怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

浴室の排水口から聞こえる声 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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新居の浴室で

会社の転勤で引っ越してきたばかりの佐伯(さえき)は、築浅の1LDKに満足していた。

駅からも近く、内装も綺麗で、特に浴室が広いのが気に入っていた。

「前のワンルームとは大違いだな」

引っ越し初日の夜、湯をためてゆっくりと入浴する。

蒸気が立ちのぼり、換気扇の音だけが静かに響いていた。

そのとき——

「……たすけて……」

小さな声が、排水口の奥から聞こえた。

気のせいではない

「……ん?」

耳を澄ますが、それ以上は何も聞こえない。

「気のせいか……」

そう自分に言い聞かせたが、それは毎晩続いた。

入浴中に湯が排水されるたび、

「……やめて……」
「……くるしい……」

まるで何かが吸い込まれるたびに苦しんでいるような声が、かすかに聞こえる。

「さすがにこれは……」

佐伯は管理会社に連絡し、排水管のチェックを依頼する。

業者は点検をしたが、異常なしという。

「たまに空気の逆流で音がすることはありますが、声は……まあ、気のせいでしょうね」

不安は拭えなかったが、証拠もなかったため、それ以上は追求できなかった。

髪の束

ある夜、シャワーを使おうとしてふと排水口を見ると、

黒い髪の毛がごっそり詰まっていた。

「……うわっ」

抜け毛にしては多すぎる。

掃除しようと排水トラップを外すと、中から異様に長い一本の髪の毛がずるりと引きずり出された。

その瞬間——

「返して……」

はっきりと、女性の声が聞こえた。

佐伯は震え上がり、その日は風呂に入れなかった。

この部屋の過去

後日、佐伯はこっそりその物件の事故歴を調べた。

すると、三年前に前の住人が浴室で死亡していたことがわかった。

「……やっぱり」

詳細は「溺死」とだけ書かれていたが、事件性はなかったという。

ただ、ある書き込みにはこう記されていた。

『夜な夜な浴室から女の声がする。水を流すと、すすり泣く声が聞こえる』

まさに、自分の体験と一致していた。

最後の声

それ以来、佐伯はできるだけシャワーだけで済ませるようになった。

湯船をためない、排水音を長引かせない。

だがある晩、酔って帰宅した佐伯は、風呂に湯を張って眠ってしまった。

目を覚ましたとき、水がすでに抜けていた。

そして、排水口の奥から——

「……ありがとう……」

初めて、穏やかな声が聞こえた。

翌朝、浴室の排水口には、何も残っていなかった。

その日以来、声が聞こえることはなくなった。

しかし佐伯は今でも、湯を流すとき、ほんの一瞬だけ耳をふさぐ癖が抜けない。



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