目次
引っ越し先の一枚の絵
俺が大学進学を機に一人暮らしを始めた部屋には、前の住人が置いていった一枚の絵があった。
壁に掛かったその絵は、赤いドレスを着た少女が佇んでいる油彩画。
誰が描いたかも分からず、取り外そうとしても、釘が異様に深く打ち込まれていて外せなかった。
「まあ、気味悪いけどインテリアだと思えばいいか」
最初のうちは、そんなふうに軽く考えていた。
しかし、その“絵”は見られていたのは、こっちのほうだったのかもしれない。
見られている感覚
住み始めて数日後から、部屋の中に妙な視線を感じるようになった。
特に、夜になると強く感じる。
テレビを見ていても、食事をしていても、ふとした瞬間に背中に刺さるような気配がある。
そして、そのたびに視線を向けてしまうのが——あの絵だった。
少女の表情は変わらない。
だが、目の位置が少しだけ変わっているように思えることが増えてきた。
「気のせいだよな……」
自分にそう言い聞かせるしかなかった。
動いた瞳
ある夜、俺はリビングでうたた寝してしまった。
ふと目を覚ますと、部屋の電気は消えていて、外は真夜中。
時計を見ると午前2時過ぎ。
その時、何かに導かれるように目を上げると——
絵の中の少女の“瞳”が、こちらをまっすぐ見ていた。
まるで、今動いたばかりのように。
俺は金縛りにあったように体が動かず、ただその瞳に吸い込まれるように見つめ返していた。
そして、その少女の口元が、かすかに“笑った”。
消えた絵とメモ
翌朝、恐る恐る絵を確認すると、少女はいつもの表情に戻っていた。
「……絶対におかしい」
俺は意を決して、業者を呼んで絵を外してもらうことにした。
やってきた作業員は、絵を見るなり顔をしかめた。
「これ、変ですよ……裏になんか書いてあります」
裏側には、紙が貼られていた。
「この絵を見た者は、“彼女”に見つめ返される。
絵が笑ったとき、もう逃げられない」
俺はすぐに絵を処分してもらった。
だが、その夜——
絵があった壁に、少女の瞳だけが描かれていた。
ペンキで塗りつぶしても、壁紙を張り替えても、翌朝には元通りになっていた。
今もそこにいる
あれから半年が経つ。
俺は引っ越した。
しかし、新しい部屋の壁にも、いつの間にか“少女の目”が現れるようになった。
どこに行っても、彼女は俺を見つめている。
ある日、スマホで寝室を撮影した時、はっきりと映っていた。
——赤いドレスの少女が、壁からこちらを覗いている姿が。
それ以来、俺は絵という絵が恐ろしくて見られなくなった。
でも、ふと目が合ってしまうことがある。
あなたの家のどこかにも、“見てはいけない絵”が掛かっていないだろうか?
もし、その瞳が少しでも動いたように見えたら——もう、手遅れかもしれない。
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