目次
台風の日の静かな時間
その年の夏、記録的な大型台風が直撃するということで、会社は臨時休業になった。
外は朝から激しい風と雨。
避難指示も出ていて外に出られず、退屈しのぎに部屋を片付けていると、押し入れから古いスケッチブックが出てきた。
「ああ、これ……子供のころのだ」
パラパラとページをめくると、懐かしい落書きや風景画が並ぶ。
しかし、最後のページだけ、見覚えのない奇妙な絵が描かれていた。
謎の絵
そこに描かれていたのは、台風で荒れた風景。
波打つ電線、倒れた標識、空を覆う真っ黒な雲。
——そしてその絵の片隅には、こちらを見つめる人影が小さく描かれていた。
「……こんなの、描いた記憶ないぞ?」
日付を見ると、10年前の同じ日付。今日とまったく同じ、台風の日。
背筋が冷たくなった。
偶然だろうと自分に言い聞かせたその瞬間、部屋の電気がふっと消えた。
窓の外に
停電だった。
外は暴風雨。懐中電灯を探していたとき、ふと窓の方に視線を向ける。
——その絵と同じ風景が、そこにあった。
倒れた標識、切れかけた電線。
絵と寸分違わず、目の前の景色が一致している。
そして、絵の中の「人影」が立っていた場所を探すと——
窓の外、電柱の根元に、黒い人影が立っていた。
びしょ濡れの体で、静かにこちらを見上げている。
増える絵の中の人影
怖くなり、再びスケッチブックをめくり直した。
すると、さっきまで描かれていなかったはずのページに、新たな絵が増えていた。
今度は、俺の部屋の内側が描かれている。
窓のそばに立つ俺自身と、背後の壁に、さっきの人影がぴたりと張り付いている。
息が詰まった。
慌てて振り返る——だが、そこには誰もいなかった。
台風一過
翌朝、台風は通り過ぎ、街は静けさを取り戻していた。
昨夜の出来事は夢だったのかもしれない。
そう思いながら机の上のスケッチブックに目をやった。
最終ページには、新しい絵が描かれていた。
それは——俺が窓を背にして、振り返った瞬間の姿。
そして、俺の背後には昨日の黒い人影が、しっかりと描き込まれていた。
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