居酒屋の薄暗いテーブル席、ビールの泡が静かに沈んでいく中、後輩のタカシは妙に真剣な顔で、ぽつりと切り出した。
「先輩……この前、ちょっと変な体験したんですよ。」
仕事帰りに軽く一杯のつもりが、どうやらただの世間話じゃ済まない雰囲気だ。
「なに、怪談か? 夏でもないのに珍しいな。」
そう茶化したが、タカシは真剣だった。
目次
後輩の“あの夜”
「実はこの前、久しぶりに実家帰ったんですよ。そこって、かなり古くて、夜になるとめちゃくちゃ静かなんです。
で、その日も部屋で一人、ソファで寝落ちしちゃって……ふと夜中に目が覚めたんです。」
「ほう?」
「変だなと思ったのは、目を覚ました瞬間からです。部屋の中、真っ暗なのに、誰かが俺の名前を呼ぶ声がするんですよ。」
『……タカシ……タカシ……』
「最初は夢の続きかと思ったんですけど、目が完全に覚めてからも声は止まなくて。」
「気味悪いな。で?」
「恐る恐る周りを見たんですが、もちろん誰もいません。でも、声はすぐ近くでずっと聞こえるんです。耳元で。」
『タカシ……こっち見て……』
「そこで、ふと気づいたんですよ。部屋の隅に、誰か立ってたんです。」
不自然な影
「真っ暗なのに、はっきりと人の形。全然動かないんですけど、視線だけはこっちを向いているのが分かる。
動けなくて、ただ見ていたら……その“影”が、足音もなくズズッとこっちに近づいてきたんです。」
「逃げなかったのか?」
「体が動かなかったんです。声も出せず、ただ見てるしかなくて。
そいつは俺の目の前まで来て、耳元でこう囁いたんですよ。」
『見つけた』
翌朝の違和感
「朝、気がついたらソファの上で倒れたまま、冷や汗でびっしょりでした。夢だったのかなって思ったんですけど……
カーテンを開けたら、部屋の窓ガラスに手の跡がくっきり残ってたんです。外側から、じゃなくて内側に。」
「マジかよ……」
タカシは冗談とも思えない顔で、黙ってグラスのビールを飲み干した。
「先輩、これって夢じゃないですよね?」
「さぁな……でも、その話、聞かなきゃよかったかもな。」
居酒屋のカウンターの奥、ガラス窓の反射に、見知らぬ白い顔がうつっているのを見たのは、その瞬間だった。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み

1冊115円のDMMコミックレンタル!

人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】

人気コミック絶賛発売中!【DMMブックス】

ロリポップ!

ムームーサーバー

新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp


![]() | 新品価格 |

![]() |

![]() | ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |

