目次
奇妙な金魚鉢
ある日、骨董市で不思議な金魚鉢を見つけた。
厚みのあるガラス越しに、ひときわ鮮やかな赤い金魚が一匹泳いでいる。
店主は「この金魚は世話いらず。水替えも餌も必要ない」と言った。
半信半疑だったが、あまりに美しい姿に惹かれ、俺はその金魚鉢ごと家へ持ち帰った。
不自然な金魚
部屋に置いて数日。
金魚はいつも同じ場所を漂っていた。
呼吸も、エラの動きも、泡も立たない。
そして、どんなに近づいてもまばたきをしない赤い目が、じっとこちらを見ている。
夜、ふと金魚鉢を覗くと、金魚は水の中ではなく、まるで空中を漂うかのように浮かんでいた。
「……これ、本当に"金魚"なのか?」
俺は疑いを抱き始めた。
違和感の正体
試しに、指で水面をそっと突いた。
しかし水面は波紋も立てず、まるで固体のガラスを触っているようだった。
それでも、金魚はゆっくりと動いた。
昼夜を問わず、俺が視線を向けると、必ず目が合う。
ある晩、金魚鉢の前を通ったとき、背筋が凍った。
金魚の赤い目が、わずかに口の形を動かしながら、こう呟いているように見えた。
「……ミテイル……」
金魚鉢の中と外
次の日、我慢できず骨董市の店主を訪ねた。
「あの金魚……いったい何なんですか?」
すると店主は静かにこう答えた。
「……あれは、金魚じゃない。"中と外が逆転した生き物"さ。」
「え?」
「ずっとお前を見てるだろ? 金魚鉢の中にいるのは金魚じゃなくて、お前の世界のほうだよ。」
その言葉を聞いた瞬間、家に戻ると、金魚鉢の中に映る風景が——
俺の部屋そのものだった。
しかも、そこには金魚鉢を覗き込んでいる俺の姿が映っていた。
今、自分がどちらの側にいるのか、わからなくなった。
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