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いつものベンチの女の子
春先、転勤先の街で新生活を始めた頃、近所の小さな公園をよく散歩していた。
夕方になると、決まって同じ場所のベンチに一人の女の子が座っている。
年の頃は小学1~2年生くらい。古びた赤いワンピースを着て、手には白いぬいぐるみを抱いていた。
いつも静かにベンチに座り、じっと動かず、笑いも泣きもせず、ただ遠くを眺めている。
通り過ぎるたびに気になってはいたが、声をかける勇気はなかった。
季節が変わっても、同じ場所に
1ヶ月、2ヶ月と季節が進んでも、女の子はいつも同じ時間、同じベンチにいた。
雨の日も、強風の日も、まるで天気など関係ないように。
「こんなに毎日、ここで待っているのか……?」
不思議に思い、思い切って話しかけた。
「こんな時間まで大丈夫?お家は?」
女の子は、ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめたまま、短く答えた。
「お母さん、迎えにくるから。」
知らされた真実
ある日、公園の管理をしている地域の自治会のおじいさんと世間話になり、
ふと女の子のことを話した。
「赤いワンピースの女の子?……まだ、いるのか。」
おじいさんは、静かに語り始めた。
数年前、公園の近くで事故にあった女の子がいた。
母親と待ち合わせの帰り道、車にはねられ、そのまま亡くなった。
「その子がよく座ってたのが、あのベンチさ。」
最後のすれ違い
その話を聞いた日から、俺はもう公園を通らなくなった。
だが数日後、どうしても気になり、再び夕暮れの公園へ足を運んだ。
ベンチには、やはりあの女の子が座っていた。
そして、俺に気づくと、小さな声でこう言った。
「お母さん、もうすぐ来るから。」
それを聞いて、もう声はかけられなかった。
以来、二度とその時間に公園を通ることはやめた。
だが今もきっと、迎えを待ち続けているのだろう。
あの公園の、同じベンチで。
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