目次
【どこにでもあった、電話ボックスの時代】
まだ携帯電話が一般的ではなかったころ、
街角や駅前、商店街の入り口など、どこにでも電話ボックスがあった時代がある。
誰かと急ぎで連絡を取りたいとき、
待ち合わせに遅れたとき、
タクシーを呼ぶとき、
電話ボックスは、人と人とを繋ぐ小さな窓口だった。
しかし、その便利さの裏で、
一つだけ決してかけてはいけない電話ボックスがあると噂された。
【最後の10円玉】
高校生の浩一(こういち)は、ある晩、最寄り駅から家に向かう途中、
財布を落としたことに気づき、慌てて交番に電話をしようと、近くの電話ボックスに入った。
ポケットにあった最後の10円玉を入れ、ダイヤルを回す。
——しかし、電話はつながらない。
「……あれ?」と切ろうとしたとき、
「プツ……」
音が切れた瞬間、受話器の向こうから、知らない女の声が聞こえてきた。
「……そこに、いるのね?」
【過去の声】
驚いて電話を切ろうとしたが、受話器が動かない。
手に力を入れても、まるで誰かに押さえられているように動かない。
女の声は続ける。
「やっと見つけた……あなた、あの時逃げたでしょ?」
浩一には、まったく覚えのない話だった。
「間違いです」と言おうとするも、口が動かない。
代わりに、勝手に言葉が漏れた。
「ごめんなさい……もう、あそこには行かないから……」
自分の意思ではない言葉。
【気がつくと】
気づくと、電話ボックスの外は夜が明け始めていた。
何時間もそこにいたのか、記憶が飛んでいる。
そして受話器は、手からはずれていた。
だが奇妙なのは、電話ボックスの中に10円玉が3枚、床に落ちていた。
「……入れたのは1枚だけのはず……」
【それ以来】
それからというもの、浩一は電話ボックスを見ると、手が震えるようになった。
しかも、あの時から——
どこに行っても、目の端に電話ボックスが見えるようになった。
駅にも、住宅街にも、時には建物の中にすら。
今ではもう使われていないはずの、ガラスの箱が、こちらをじっと見ている。
そしてときどき、どこかから呼びかける声が聞こえる。
「次はいつ、話してくれるの?」
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