目次
残された公衆電話
時代はスマホ全盛だが、俺の通勤路にはまだ一つだけ電話ボックスが残っている。
駅から少し離れた小さな公園の入り口。
古びていて誰も使っていないはずだが、いつ通っても中の照明だけは妙に明るい。
ある日、会社帰りにその前を通ったとき、ボックスの中の電話機が鳴っていた。
「……今どき、公衆電話が鳴るか?」
不思議に思いながらも、酔っていた俺は興味本位で受話器を取った。
つながった声
「……きこえますか……」
受話器から聞こえたのは、若い女性のかすれた声だった。
「はい。誰ですか?」
「……たすけて……ここ、出られないの……ずっと……ここにいるの……」
声が徐々に遠ざかるように響き、最後に雑音が混じって通話が切れた。
冗談だろうかと思いながらも、背筋が寒くなった。
ボックスを出て後ろを振り返ると、ガラス越しに、誰もいないはずの電話ボックスの中で受話器が再び浮かび上がるように揺れていた。
消えた女の子
後日、あの電話ボックスのことが気になり、地元の掲示板を調べてみた。
すると、10年以上前に高校生の女の子が公園近くで行方不明になったという古い記事を見つけた。
最後に確認されたのは、駅の防犯カメラ。
彼女が電話ボックスに入っていく姿が映っていたが、出てくる映像はなかった。
そして、そのまま彼女の足取りは完全に途絶えた。
夜に鳴る番号
試しに、自分のスマホから公衆電話の番号を調べてかけてみた。
——呼び出し音すら鳴らなかった。
だが、その夜。
自分のスマホに、非通知の着信があった。
出ると、あの時と同じかすれた声が言った。
「……あなた、覚えてるよね……つながった人……もう、かえれないよ……」
今も誰かが取る
それからというもの、夜中にその電話ボックスの前を通ると、必ず誰かが中にいるような気配がする。
ガラスが曇り、受話器がわずかに揺れている。
通り過ぎるたび、耳の奥でかすかに鳴る。
……トゥルルル……
どうか、出ないでほしい。
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