「俺、マジで異世界転生したいんだよね」
その言葉を最後に、友人の祐樹(ゆうき)は姿を消した。
高校時代からの付き合いで、いわゆる“ちょっとオタク寄り”のやつだった。異世界転生もののラノベが大好きで、飲みに行くたびに「異世界なら俺、もうちょっと上手く生きられると思うんだよな」って真顔で話してた。
祐樹の失踪は、ある意味で“予兆”があった。
2024年の秋、10月の三連休の終わりだった。俺たちはいつものように居酒屋で飲んでいた。「また会社で怒られた」「今月のノルマがヤバい」と愚痴を言い合って、話はいつもの異世界妄想へ。
その日、祐樹は笑いながらこう言った。
「本当に行けたらいいのにな。あっちの世界で、転生して冒険者とかになってさ。そっちから連絡できたら、送るよ。LINEで。」
その翌日から、祐樹は音信不通になった。
目次
捜索、そして“最初のメッセージ”
彼の失踪はすぐに家族が警察に届け出た。SNSも止まり、職場にも来ず、携帯も電源が切られていた。最後に会ったのが俺だったということで、事情聴取もされた。
だが、何の手がかりも出なかった。まるで、世界からスッと消えたように。
そして、失踪から4日後。俺のスマホにLINEの通知が届いた。
祐樹からだった。
「やばい、本当に異世界だった」
は?としか思えなかった。バカな冗談だろうと返信した。
俺:どこにいるんだよ?何があった?
祐樹:転生した。ほんとに。死んでない。なんか“門”みたいなのが開いてた。入ったら、ここ。
祐樹:あ、でも飯うまいし、わりと文明ある。俺、今“冒険者見習い”やってる。剣もってる。笑
メッセージは冗談めいていた。でも、送信時刻はリアルタイム。本当に“今”誰かが操作している。
警察に相談してみたが…
さすがに気味が悪くなり、スクリーンショットを取って警察に見せた。
だが、相手にされなかった。
「誰かが彼のアカウントを使って悪質なイタズラをしてるんじゃないか」と。
でも、その後も祐樹からのLINEは続いた。
祐樹:今日ね、初めてスライム倒した!まじでヌルヌル!
祐樹:ギルドの受付嬢がかわいい。髪ピンク。あと耳がちょっと長い。エルフっぽい。
祐樹:たまに、こっちの時間とズレるんだけど、たぶん異世界あるある。
写真は一枚も送られてこない。理由を聞くと、
祐樹:スマホは持ち込めたけど、カメラ起動できない。魔力干渉?だってさ。訳わからん。
奇妙な日常が始まった
やがて俺の中で、祐樹が“異世界にいる”という前提が、日常になった。
朝起きて、祐樹からのメッセージを見るのがルーティンになった。天気、飯、ギルドでの出来事、小さな冒険。
内容はどれも、ラノベそのままのように荒唐無稽だけど…不思議とリアルだった。
「転生って、本当にあるんじゃないか」
俺は、誰にも言えないまま、少しずつ現実の感覚がズレていった。
友人とのやり取りと、これから
つい最近のメッセージ。
祐樹:お前も来れば?なんか“扉”はたまに現れるらしいよ。行き方、今度ギルドの賢者に聞いてみる。
正直、怖くもある。でも…少しだけ、心が動いた。
人生がうまくいってるとは言えない今、彼の言葉は不思議な魅力を持って響いてくる。
祐樹は、あっちの世界で元気にやっている。
俺は、こっちの世界で、彼の異世界冒険譚を読むのが日課になった。
異世界は確かに存在する。少なくとも、“彼の中”では。
そして、スマホの中だけは、俺もその世界の一部になっている気がする。
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