目次
【それは普通の帰り道だった】
これは、昨年の秋、仕事帰りに体験した話です。
残業を終え、23時過ぎに職場を出た私は、
いつもの道を歩いて最寄り駅に向かっていました。
空気は涼しく、空は澄んでいて、月がよく見える夜でした。
ふと空を見上げると、そこには月が2つ浮かんでいたんです。
一瞬、目を疑いました。
白く丸い月の隣に、もう一つ、同じ大きさ、同じ色の月が。
【あり得ないはずなのに】
「月が2つ?冗談だろ……」
酔っているわけでもなく、体調も問題なかった。
スマホを取り出して撮影しようとしたが、
画面にはなぜか片方の月しか映らない。
しかも、スマホで見える月と、肉眼で見えている月の位置が違う。
この時点で、心の奥にじわりとした不安が広がってきた。
【周囲の人は…?】
近くを歩いていた通行人や、自転車の学生に聞いてみようと思い、
「すみません、ちょっと……」と声をかけようとした。
だが、誰一人、私の声に反応しなかった。
まるで透明人間になったように、私を見てもいないし、聞こえてもいない。
そして、すれ違う人たちの目が、全員下を向いていた。
誰一人として、空を見ようとしていない。
【月が入れ替わった】
さらにおかしなことが起きた。
数分後、2つの月がゆっくりと重なり始めた。
本物の月が、もう一方の月とぴったり重なった瞬間、
街灯が一斉に一瞬だけ消え、周囲の音がピタッと止まった。
心臓の音だけが異様に大きく聞こえた瞬間、
まったく知らない場所に立っていた。
見慣れた街並みではなく、昭和のような造りの町。
古い電柱、砂利道、看板の文字もどこか古臭い。
【元の世界に戻ったはずが】
数分間あたりを歩いた後、急に耳鳴りがして、視界がグラッと揺れた。
気がつくと、また元の帰り道に戻っていた。
さっきまでの“別の世界”の記憶が、まるで夢のように薄れていく。
ただ、一つだけ。
スマホの時計が、23時08分から一度も動いていなかった。
その日は結局、帰宅後も眠れなかった。
【翌日の気づき】
翌日、会社の同僚に何気なく「昨日の月、すごく綺麗だったね」と話すと、
皆、こう返してきた。
「え? 昨日は雨だったよ」
私の地域も、天気アプリも、全て「降雨」になっていた。
でも、あのとき確かに、私は空を見上げ、
月が2つ浮かんでいるのを見た。
あのもう一つの月は、たぶん——
「こっち側の世界」じゃない方の、月だった。
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