目次
消えかけた記憶の場所
大学時代、夏休みに帰省した際、ふと小学生の頃によく通っていた駄菓子屋のことを思い出しました。
名前は「やまざき屋」。
当時から古びた建物で、いつの間にか閉店していたと記憶していました。
ある日、実家の近所を散歩していると、その駄菓子屋の前に人の気配がありました。
「まだやってたのか?」と驚きながら近づくと、昔と変わらない木の引き戸が開いていて、
中からはほんのりとソースせんべいや梅ジャムのような、懐かしい匂いが漂ってきました。
懐かしさの裏にある“違和感”
中に入ると、カウンターには白髪のおばあさんが座っており、
まるで20年前の記憶がそのまま再現されたような品揃えが並んでいました。
駄菓子の値段も変わっていませんでした
不思議に思いながら「まだ営業してたんですね」と聞くと、
おばあさんはにっこり笑って、こう言いました。
「ここは、来たい人しか来られないのよ」
店の奥の扉
ふと目に入ったのが、昔は無かった店の奥にある襖(ふすま)。
おばあさんが視線に気づいたのか、
「覗いてもいいけど、帰る道を忘れないでね」とぽつり。
好奇心に負けて襖を開けてみると、
そこには畳でも部屋でもなく、草むらのような空間が広がっていた。
空はどんよりと灰色で、空気は重く、どこか時間の感覚が狂っているような世界。
一歩踏み出した瞬間、空気が変わったのを肌で感じた。
誰もいない世界
その空間には誰の姿もなく、音もなく、
ただ風もないのに草だけが揺れていた。
帰ろうと振り返ると、入ってきたはずの襖がない。
焦って歩き回っていると、草の中に小さな紙袋が落ちていた。
中には、駄菓子と同じ包装紙で作られた紙人形が入っていた。
自分の名前が書かれたものもあった。
それを手に取った瞬間、
視界が真っ白になり——気づくと、また駄菓子屋の中に戻っていた。
おばあさんは変わらぬ笑みで「忘れ物なかった?」とだけ聞いた。
あの駄菓子屋はもうない
帰宅後、気になって次の日に再び行ってみたが、
やまざき屋は完全に潰れていて、建物も更地になっていた。
母に聞いても「そんな店、あんたが小学生の頃にもう無くなってたでしょ」と言われた。
だけど、ポケットの中には、あの紙人形がしっかりと残っていた。
あれは何だったのか。
今も分からないが、ひとつだけ確信している。
あの駄菓子屋の奥には、確かに“異界”への入り口があった。
そして、あのとき戻ってこられたのは——運が良かっただけなのかもしれない。
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