目次
■1. 終電を逃した夜
これは数年前、都内で働いていた頃のことです。
残業が長引き、終電を逃してしまった帰り道。
タクシー代をケチって、家の最寄りの1つ手前の駅まで深夜の街を歩きました。
午前1時近く、もう誰もいないホーム何気なく見ていたときです。
ふと、線路の向こうから電車の接近を知らせる風の音のようなものが聞こえました。
(まさか、まだ電車が走ってるのか?)
■2. “来るはずのない”電車
しばらくすると、闇の中から薄暗いヘッドライトの光が現れました。
やがて、古びた車両が静かにホームへ滑り込んできました。
色褪せた車体、社名ロゴも消えかけていて、
どこか地方の廃線で使われていたような古さを感じました。
案内放送もなく、行き先表示は「■■」と、読み取れない文字が流れている。
時刻表を確認しても、この時間に電車は1本もない。
それでも、ドアは「プシュー…」という静かな音を立てて開きました。
中は、真っ暗ではないけれど、車内灯が異様に赤い。
乗客は数人いた気がしたけれど、全員が無表情で、前を向いたまま動かない。
■3. 「乗りますか?」
呆然としていると、制服を着た車掌のような人物がドア横に立って、こちらを見て言いました。
「乗りますか?」
その声が、まるで機械で再生された音声のように無機質で、少しだけ遅れて響く。
思わず「いや、いいです…」と答えると、車掌は小さくうなずき、
無言でドアが閉まりました。
電車は何事もなかったかのように、ゆっくりと発車して暗闇の中へと消えていきました。
■4. 誰も信じてくれなかった
翌日、駅員に「あの時間に臨時列車とかありましたか?」と尋ねましたが、
「1時以降は完全に運行終了です」との回答。
監視カメラの映像も、その時間は“誰もいなかった”と記録されていたそうです。
(あの電車は…じゃあ、何だったのか)
スマホで写真を撮ったはずだったけど、アルバムには何も残っていなかった。
■5. もしかしたら、あの時…
ふと思うんです。
あの時、あの車掌に「乗ります」と答えていたら、
自分も、あの赤い光の中で無表情に前を向いていたんじゃないかって。
今も時々、終電間際のホームに立つと、
風の中に混ざってあの電車の接近音が聞こえる気がすることがあります。
きっと、“どこかに行きたい誰か”のために、
時刻表にないその電車は今も走っているのかもしれません。
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