これは、私が中学生の頃に体験した、不思議で恐ろしい出来事です。夏休みのある日、私は祖母の家に遊びに行きました。祖母の家は古い木造の家で、田舎の静かな村にありました。いつもと変わらない平和な夏休みになるはずでしたが、その年の夏休みは全く違いました。
ある日、祖母の家の二階にある古い部屋を掃除していた時、私は大きな鏡を見つけました。その鏡は、床から天井まで届くほどの大きさで、重厚な木製のフレームに囲まれていました。鏡は埃をかぶっており、長い間使われていないようでした。私は好奇心に駆られ、鏡を拭いてみることにしました。
鏡を拭いていると、突然、鏡の中に奇妙な光が走り、私は思わず手を引っ込めました。何かが起こる予感がしましたが、その時は特に気にせず掃除を続けました。その夜、私は祖母の家の庭で花火を楽しみ、昼間の掃除の疲れもあったのか、疲れ果ててすぐに眠りについてしまいました。
深夜、私は何かの気配で目を覚ましました。部屋の中が異様に静まり返り、何かがおかしいと感じました。ふと気がつくと、二階の古い部屋から光が漏れているのが見えました。恐る恐る部屋に近づいてみると、ドアが半開きになっており、中から奇妙な光が放たれていました。
私は勇気を出してドアを開け、部屋の中に入ってみました。すると、昼間見つけた大きな鏡が輝いており、まるで異世界への入口のように見えました。好奇心に勝てず、私は鏡の前に立ちました。その瞬間、鏡の中の世界が現実のように広がり、私は足を踏み入れてしまいました。
鏡の中の世界は、私が知っている現実とは全く違っていました。空は血のように赤く、大地は不気味なほど静まり返っていました。周囲には見知らぬ建物や風景が広がっており、まるで悪夢の中にいるかのようでした。私は恐怖に駆られながらも、何かに引き寄せられるように歩き出しました。
しばらく歩くと、古びた家が見えてきました。その家は、現実世界の祖母の家に似ていましたが、どこかが違っていました。私は家の中に入り、薄暗い廊下を進んでいきました。廊下の奥には、またもや大きな鏡がありました。その鏡は、私を見つめるように輝いていました。
私は恐る恐る鏡に近づき、手を伸ばしてみました。すると、鏡の中の自分が突然動き出し、私を引きずり込もうとしました。驚いた私は必死に抵抗しましたが、力は圧倒的でした。まるで鏡の中の存在が私を取り込もうとしているかのようでした。
その時、現実世界の祖母の声が聞こえました。「早く帰っておいで!」と叫ぶ声に、私は一瞬の隙を突いて鏡から手を引き離しました。次の瞬間、私は現実世界の古い部屋に戻っていました。鏡は元のように静まり返り、まるで何事もなかったかのようでした。
その後、祖母に話を聞くと、あの鏡には昔から不思議な力が宿っていると言われているとのことでした。祖母は私に、「あの鏡には近づいてはいけないよ」と言い聞かせました。
あの出来事以来、私は二度とあの鏡に近づくことはありませんでした。しかし、時折夢の中であの異世界の光景がよみがえり、恐怖に包まれることがあります。鏡の中の異世界が現実だったのか、それともただの幻覚だったのかは今でもわかりません。ただ一つ確かなのは、あの鏡が普通の鏡ではなかったということです。
私たちが日常生活で見過ごしているものの中には、まだまだ未知の力や秘密が隠されているのかもしれません。あの夏の日の出来事は、私にそのことを教えてくれました。