とある田舎町に、古くから伝わる奇妙な伝説があった。
それは、年に一度だけ、近くの村が忽然と姿を消してしまうという伝説である。
その村は、深い山奥にあり、人里から隔絶されていた。
村人たちは、外界との交流をほとんどせず、独自の文化や風習を守り続けていたという。
ある年の夏、その村を訪れた一人の旅行客が、村が消えたという噂を耳にした。
旅行客は好奇心から、村へと向かった。
しかし、村がどこにあるのか分からず、道に迷ってしまった。
日が暮れ始め、辺りは暗闇に包まれていく。
旅行客は暗闇の中で少し恐怖を感じながら、道を彷徨った。
もうどこにもたどり着けないのではないかと、途方に暮れだしたとき。
どこからともなく声が聞こえてきた。
旅行客は声の方向を見ると、そこに一人の少女が立っていた。
「助けてくれ…」
少女は、村へと案内してくれると言った。
旅行客は、少女に導かれながら、深い森の中を進んでいった。
しばらく歩くと、ようやく村が見えてきた。
しかし、その村は、何か様子がおかしい。
村の建物は、全て朽ち果て、人影は全く見当たらない。
旅行客は、恐る恐る村へと足を踏み入れた。
すると、突然、村全体が光に包まれた。
そして、村は消えてしまった。
旅行客は、呆然と立ち尽くしていた。
目の前にあった村は、まるで夢だったかのように消えてしまったのだ。
旅行客は、その体験を誰にも話さなかった。
そして、その村が再び現れることは、一度もなかった。