大学時代、友人の翔太と一緒に奇妙な体験をしました。それは夏の終わり、私たちがキャンプを楽しんでいた時のことでした。
その日は暑く、私たちは大学の友人たちと一緒に山奥の湖にキャンプに出かけました。自然に囲まれたその場所は、日常の喧騒から離れてリラックスするのに最適でした。昼間はバーベキューを楽しみ、夜は星空を眺めながら焚き火を囲んで語り合いました。
深夜、皆が寝静まった後、私は何となく目が覚めました。湖のほとりに立ち、静かな水面を見つめていると、翔太が近づいてきました。「湖がまるで鏡のようだな」と言いながら、私の隣に立ちました。
私たちはしばらく無言で湖を眺めていました。湖の水面は月明かりを反射し、まるで銀色の鏡のように輝いていました。その時、何かが水面に浮かび上がるのを目にしました。最初は波の影かと思いましたが、それは徐々に人の形を取り始めました。
「何だあれ?」翔太が驚いて言いました。私たちはその影に目を凝らしました。それは明らかに人の姿をしており、まるでこちらを見つめているようでした。恐怖心が湧き上がり、私は後ずさりしましたが、翔太は興味津々でその影に近づいていきました。
「翔太、やめろ!何かおかしいぞ!」私は叫びましたが、彼は立ち止まりませんでした。翔太が湖の端に立った瞬間、影が突然湖から這い上がり、翔太の手を掴みました。翔太は驚いて後退りしようとしましたが、力強く引っ張られ、水の中に引きずり込まれてしまいました。
「翔太!」私は叫び、湖に飛び込みました。しかし、翔太の姿はどこにも見当たりませんでした。必死に彼を探しましたが、水面は再び静かになり、まるで何事もなかったかのように静まり返っていました。私は岸に戻り、全身ずぶ濡れのまま茫然と立ち尽くしました。
翌朝、友人たちに翔太の失踪を説明しましたが、誰も信じてくれませんでした。彼らはただの悪い夢だと言い、捜索を手伝ってくれましたが、何の手がかりも見つかりませんでした。警察にも連絡しましたが、翔太は行方不明のままでした。
それから数日が経ち、私は一人で湖に戻りました。再び夜が訪れ、湖のほとりに立ちました。湖の水面は再び鏡のように静かで、私は翔太の姿を探しました。その時、再び人影が水面に現れました。今度ははっきりと見えました。それは翔太でした。
「翔太…?」私は恐る恐る声をかけました。翔太は無表情で、冷たい目でこちらを見つめていました。「助けてくれ…」彼の声がかすかに聞こえました。私は恐怖と絶望で体が震えました。翔太の姿は徐々に消え、水面は再び静まりました。
その後、私は何度も湖に足を運びましたが、翔太の姿を見ることはありませんでした。友人たちも次第に私を遠ざけるようになり、私は孤独に苛まれました。大学生活は続きましたが、私は常にあの夜の出来事を忘れることができませんでした。
数年後、私は再びあの湖を訪れることにしました。湖のほとりに立ち、静かな水面を見つめました。何も変わっていないように見えましたが、心の奥底で何かが囁いているのを感じました。
その時、ふと水面に映る自分の姿が歪んで見えました。驚いて目を凝らすと、水面にもう一つの顔が浮かび上がりました。それは翔太の顔でした。彼は無表情で、冷たい目でこちらを見つめていました。「助けてくれ…」彼の声が再び聞こえました。
私は恐怖と絶望に包まれながらも、彼を助ける方法がわからず立ち尽くしました。翔太の姿は徐々に消え、水面は再び静まりました。私はその場を離れ、二度と戻ることはありませんでした。
今でもあの湖のことを思い出すと、背筋が凍る思いがします。翔太はどこに行ってしまったのか、何が彼を襲ったのか、誰にもわかりません。ただ一つ確かなのは、あの湖が普通の場所ではないということです。私たちの世界には、まだまだ解明されていない恐怖が潜んでいるのかもしれません。
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