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異界の内科:不気味な街と消えた人々(怖い話、奇妙な話)

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私は、大学生です。普段は健康には気を使っている方ですが、最近の急な気温の変化に体がついていかず、ついに風邪をひいてしまいました。喉の痛みと鼻水が止まらず、次第に熱も上がってきました。自宅での簡単な治療では効果がなく、どうしてもかかりつけの内科医に診てもらう必要がありました。いつも通っている内科は少し距離がありますが、信頼できる先生がいるので、母も勧めてくれました。

その日の朝、私は少しぼんやりとした状態で車に乗り込みました。母が心配そうに見送ってくれました。「気をつけてね。無理しないで、すぐに戻ってきて。」私は頷き、エンジンをかけました。普段なら気にも留めない些細なことが、この時は妙に胸騒ぎを感じさせました。

車を運転している間、見慣れた街並みが広がっていました。しかし、何かがおかしいと感じ始めました。最初は何が変なのか分かりませんでしたが、徐々にその違和感が大きくなってきました。信号は正常に動いているのに、道路には他の車が一台も走っていないのです。歩道にも人影はなく、まるで街全体がゴーストタウンになったかのようでした。

「これは一体どういうことだ?」私は独り言を呟きましたが、答えは返ってきません。ますます不安が募る中、内科へと向かう道を進みました。

内科に到着すると、駐車場にも一台の車も停まっていませんでした。普段なら混み合っているはずのこの場所が、完全に静まり返っていました。私は車を降り、診療所のドアを開けました。

「こんにちは?」私は声をかけましたが、返事はありません。受付には誰もおらず、待合室も空っぽでした。熱が上がってきたのか、頭がぼーっとしてきました。私は受付のベルを鳴らしましたが、無反応でした。

「誰かいませんか?」私はもう一度大きな声で呼びかけましたが、返ってくるのは自分の声の反響だけでした。不気味な沈黙が診療所を包み込み、私はますます不安になりました。

その時、突然めまいがしてきました。視界がぼやけ、足元がぐらつきました。私はなんとか診察室に入ろうとしましたが、次の瞬間、意識が遠のき、床に倒れ込みました。

気が付くと、私は自分のベッドに横たわっていました。天井が見え、部屋の中にかすかに母の声が聞こえました。私はゆっくりと起き上がり、部屋のドアを開けました。母がリビングでテレビを見ていました。

「お母さん…私は内科に行ったの?」私は混乱しながら尋ねました。

母は驚いたようにこちらを見ました。「何を言ってるの?ちゃんと行って処方された薬もしっかり飲んでいたよ。お医者さんにも診てもらって、安心したわ。」

「でも、私は…内科に着いたとき、誰もいなくて…それで倒れたんじゃないの?」私は頭を抱えながら記憶を辿りましたが、現実感がどんどん薄れていくような気がしました。

母は困惑した表情で私を見つめました。「本当に大丈夫?ちゃんと内科に行って帰ってきたじゃない。薬も飲んで、少し休んでいたのよ。」

私の頭の中で、現実と夢の境界が曖昧になっていきました。母の言葉を信じるしかありませんでしたが、あの時見た無人の街と診療所の光景がどうしても頭から離れませんでした。

翌日、私は体調が少し回復したので、再び内科に行くことにしました。今度は母に付き添ってもらいました。道中、私は不安と期待が入り混じった気持ちで周囲を観察していましたが、今回は車や人々が普通に活動していました。

内科に到着すると、駐車場はいつも通り混み合っていました。受付には笑顔のスタッフがいて、待合室には患者が座っていました。私は診察を受けるために名前を呼ばれ、診察室に入りました。

先生はいつも通り優しく診察をしてくれました。「体調はどうですか?少し熱が下がったようですね。」

私は頷きましたが、心の中ではあの不気味な出来事が渦巻いていました。診察が終わり、処方された薬を受け取り、母と一緒に帰ることにしました。

車の中で、母が話しかけてきました。「本当に昨日のことを覚えてないの?」

「うん…昨日は、熱のせいでちょっと混乱しちゃったみたい。」私は答えましたが、心の中ではまだ納得できない部分が残っていました。

その夜、私は奇妙な夢を見ました。無人の街と診療所、そして倒れる自分の姿。しかし、夢の中では何かが変わっていました。診療所の中で、誰かが私に向かって手を伸ばしていたのです。その手は冷たく、不気味な感覚を伴っていました。

目が覚めたとき、私は冷や汗をかいていました。これが単なる夢なのか、それとも何か別の次元の出来事なのか、私には分かりませんでした。しかし、あの日の出来事が私にとって現実であったことは確かでした。

数日後、私は再び内科を訪れました。今度は一人で、あの日の真実を確かめるためです。診療所のスタッフに話しかけ、あの日の出来事について尋ねました。

「すみません、数日前にここに来たとき、誰もいなかったんです。何か変わったことはありましたか?」

スタッフは首を傾げました。「いいえ、その日は普通に診療を行っていましたよ。特に変わったことはありませんでしたが…」

私の不安は増すばかりでしたが、これ以上深く追求することはできませんでした。私が見た光景は、一体何だったのでしょうか。今でもその答えは見つかっていません。

この経験は私にとって忘れられない恐怖の記憶となりました。現実、夢、どちらなのか、私はあの日の出来事を心に秘めて生きていくしかないのです。

このようにして、私は風邪を引いた日の恐怖の体験をしました。皆さんも、体調が悪いときには気を付けてください。いつのまにか異界へ迷い込んでしまうかもしれません。

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