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闇に潜むもの:忘れられた村の怪奇(怖い話 奇妙な話)

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私の名前はタカシ、30歳の会社員です。都会の喧騒に疲れ果て、久しぶりに田舎の実家に戻ることにしました。幼少期を過ごしたあの静かな村で、少しの間だけでも心の休息を取ろうと思ったのです。夏休みを利用して実家に帰省したその日、村の風景は昔と変わらず、美しい自然と静けさに包まれていました。しかし、その静けさの中に不穏な空気が漂っていることに、私はすぐに気づきました。

村に到着してしばらく経った夕暮れ時、私は祖母から村の古い伝説について聞かされました。祖母は厳かな表情で語り始めました。

「タカシ、この村には決して近づいてはいけない場所があるんだよ。それは、村の外れにある廃墟の家だ。」

私は子供の頃、その家の存在を噂で聞いたことがありましたが、詳しい話を知るのは初めてでした。

「どうしてその家に近づいてはいけないの?」

祖母はため息をつき、低い声で続けました。

「あの家には昔、村を守る巫女が住んでいたと言われている。しかし、ある日突然、巫女が行方不明になり、それ以来その家は呪われた場所となったのさ。夜になると、巫女の怨霊が出ると言われているんだよ。」

「巫女の失踪は村にとって大きな出来事だったんだ。彼女の名はアヤメといい、美しいだけでなく、その霊力は村中で称賛されていた。彼女は村の祭りのたびに神事を執り行い、村人たちの平穏を祈っていたんだ。しかし、ある年の祭りの前夜、アヤメは忽然と姿を消してしまった。」

祖母は声を潜め、一層真剣な表情になりました。

「アヤメの失踪には奇妙な点が多かった。まず、彼女の家の中は荒らされた様子もなく、まるで何事もなかったかのように整然としていた。玄関の鍵も閉まっており、強引に連れ去られた形跡もなかった。そして、村人たちが目撃したのは、祭りの前夜、彼女の家の周りを漂う不気味な光だった。青白い光が家の中から漏れ出し、まるで何かを呼び寄せるかのように揺らめいていたという。」

「その光を見た村人たちは不安に駆られ、家の中を調べようとした。しかし、家の中に入った者たちは何故か皆、強い頭痛やめまいを訴え、結局誰も奥まで踏み込むことができなかった。翌朝、アヤメの姿が消えていることに気付いた村人たちは、大急ぎで村中を捜索したが、彼女の行方は杳として知れなかったんだ。」

「捜索は数日間にわたり続けられたが、村の周囲には彼女の足跡ひとつ見つからなかった。まるで地面が彼女を飲み込んでしまったかのようだった。そして、村の長老たちは、アヤメが何か強力な霊的存在によって連れ去られたのだと結論づけた。」

「それからしばらくして、村には奇妙な現象が起こり始めた。夜になると、アヤメの家からはすすり泣くような声が聞こえたり、窓の中に彼女の姿が見えたりしたという。だが、誰もその家に近づこうとはしなかった。恐怖が村人たちを縛り、次第にその家は『呪われた家』として忌み嫌われるようになったんだ。」

私は祖母の話に聞き入っていましたが、その内容があまりにも生々しく、不気味なものであるため、背筋が凍る思いがしました。

「タカシ、だからこそ、あの家には決して近づいてはいけない。アヤメの怨霊がまだそこにいるのかもしれないし、何か別の悪いものが巣食っているかもしれない。」

祖母の忠告を胸に刻みながらも、私は好奇心に駆られました。あの家に何があるのか、そして本当に巫女の怨霊が存在するのかを確かめたいという気持ちが沸き上がってきたのです。

その夜、私は不安と好奇心が入り混じった気持ちで眠りにつきました。翌日、私は村を散策することにしました。村の景色は懐かしく、子供の頃に戻ったような気持ちになりました。しかし、祖母の話が頭から離れず、気がつくと私はその廃墟の家の方向へ足を向けていました。

道を進むにつれて、周囲の雰囲気が変わっていくのを感じました。風の音、鳥のさえずり、すべてが遠のいていき、異様な静けさが広がりました。そして、ついにその廃墟の家が見えてきました。家は崩れかけ、雑草に覆われていましたが、不思議な力がそこに存在しているように感じました。

恐る恐る家の中に入ると、そこには古びた家具や破れた障子が散乱していました。空気は重く、かすかに腐臭が漂っていました。突然、背後から冷たい風が吹き抜け、私は身震いしました。振り返ると、誰もいないはずの家の中に、かすかに人影が見えました。

「誰だ?」私は声をかけましたが、返事はありません。人影は一瞬で消え、再び静寂が戻りました。しかし、その瞬間から、私は何かに取り憑かれたような感覚に陥りました。

家を出た後も、その不気味な感覚は消えませんでした。夜になると、不安が増し、夢の中であの家の巫女が現れました。彼女は私に何かを伝えようとしているようでしたが、その言葉は理解できませんでした。目が覚めると、冷や汗でびっしょりでした。

翌日、私は村の老人たちに話を聞くことにしました。老人たちは私が廃墟の家に近づいたことを知ると、驚きと恐怖の表情を浮かべました。「タカシ、お前はあの家に近づいてはいけなかったんだ。あの巫女の怨念は強い。お前にも危険が及ぶかもしれない。」

その言葉に、私はさらに不安を覚えました。何とかしてこの不気味な出来事の真相を解明しなければならないと感じました。私は再び廃墟の家に向かい、そこで起きた出来事を調べることにしました。

夜が訪れ、私は再びあの家に足を踏み入れました。懐中電灯を片手に、家の奥へと進みました。すると、一つの部屋に古い祭壇がありました。そこには巫女の遺品と思われるものが置かれていました。私はその中に、一冊の古い日記を見つけました。

日記には、巫女の苦悩と村を守るための儀式について詳細に書かれていました。彼女は村の平和を守るために、自らの命を捧げたのです。しかし、その儀式が失敗し、彼女の魂はこの世に囚われてしまったということでした。

日記を読み進めるうちに、私は巫女の魂を解放する方法を見つけました。それは、彼女の遺品を祭壇に戻し、正しい儀式を行うことでした。私はその儀式を行う決意をし、準備を始めました。

夜が更け、村は静寂に包まれていました。私は巫女の遺品を持ち、祭壇の前に立ちました。日記に記された通りの儀式を始めると、周囲の空気が変わり、冷たい風が吹き始めました。儀式が進むにつれて、巫女の姿が現れました。彼女の目には悲しみと苦しみが映っていました。

「お願いです、あなたを解放させてください。」私は心の中で祈りながら、儀式を続けました。最後の言葉を唱えると、巫女の姿は徐々に消えていき、家の中には静寂が戻りました。

その瞬間、私は重い呪いから解放されたような感覚を覚えました。巫女の魂はついに安らぎを得たのです。家を出ると、夜空には美しい星が輝いていました。私は深呼吸をし、村に戻りました。

翌日、村の雰囲気は一変していました。老人たちは私に感謝し、村の平和が戻ったことを喜んでいました。祖母も微笑みながら、「よくやったね、タカシ。」と言ってくれました。

この経験は私にとって忘れられないものとなりました。闇に潜むものの恐怖を知り、その闇を乗り越える勇気を得たのです。私は再び都会に戻り、日常生活を送りながらも、あの村での出来事を心に刻んで生きていくことを誓いました。

このようにして、私は忘れられた村の怪奇を体験しました。皆さんも、古い伝承や噂話を軽視せず、時にはその背後に隠された真実に目を向けてみてください。

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