田舎の小さな村には、長い間放置された古びた家がありました。家の周囲には誰も近づかず、その家はまるで村人たちから忘れられた存在となっていました。噂によれば、その家には奇妙な現象が起こるという話がありました。
ある秋の夜、都会から来た若いカップルがその村を訪れました。彼らは歴史的な建物や古い町並みを見て回るのが好きで、村の古びた家にも興味を持ちました。ガイドブックにはその家の歴史について詳しく書かれていませんでしたが、何か不思議なものを見つけられるのではないかと期待していました。
日が暮れ始めた頃、カップルはその家の前に立ちました。家は崩れかけており、壁には多数のひびが入っていました。彼らはドアを開けて中に入ると、家の中には古びた家具やほこりだらけの物が散らばっていました。彼らは家の中を見て回りながら、徐々に奥へと進んでいきました。
すると、二階の廊下で突然、かすかな音が聞こえてきました。子供が歩くような、かすかな靴音でした。カップルは音の出所を探すために廊下を歩きながら、音が次第に大きくなっているのを感じました。音が近づいてくると、彼らは近所の子供が遊びに来ているのかと思いました。
廊下の奥にある部屋のドアを開けると、そこには何もありませんでした。部屋の中央には古いベッドと棚がありましたが、靴の音は一向に止まりません。彼らが振り返ると、部屋の隅に黒い子供の靴が置かれているのに気づきました。その靴は明らかに古いもので、サイズも子供のものでした。
「これ、何かのいたずらかな?」カップルの一人が言いましたが、もう一人はその靴が不気味だと感じていました。彼らは靴に近づいて見てみると、靴の内側に何か小さなものが挟まっているのを見つけました。カップルはその小さなものを取り出すと、それは古びた手紙でした。
手紙には、かつてこの家に住んでいた子供の名前と日付が書かれていました。その日付は、ちょうど子供が行方不明になった日のものでした。手紙の内容は、子供が迷子になり、一生懸命探したが、結局助けられなかったことを綴っていました。
カップルは恐怖に駆られながらも、部屋の中でさらに調べることに決めました。すると、部屋の壁に奇妙な跡があることに気づきました。それは、人の手で掻きむしられたような跡で、まるで誰かが必死に助けを求めていたかのような跡でした。
その晩、カップルは家を出ることに決めましたが、途中で急に靴の音が再び聞こえ始めました。振り返ると、家の窓から子供の影がちらりと見えました。カップルは恐怖で走り出し、その家から離れました。
後日、村の人々に話を聞くと、その家にはかつて一人の子供が住んでおり、行方不明になったままだったということがわかりました。その子供は家の中で何か恐ろしい出来事に巻き込まれたのかもしれないという話がありました。家はその後も取り壊されることはなく、今もひっそりと立っていると言われています。
そして、黒い子供の靴が今もどこかに残されているという噂があります。その靴が再び誰かに見つけられた時、また別の不気味な現象が起こるのかもしれません。
怪談屋怪談: 怖い話を知り尽くした18人が語る舞台裏と実体験 新品価格 |