町の外れに古びた洋館がありました。その洋館には「この家の鏡は決して見つめてはならない」という奇妙な言い伝えがありました。町の人々はその言い伝えを恐れ、誰も近づくことはありませんでした。
ある日、高校生のあかりは、友達と一緒に心霊スポットを探検しようと決めました。ネットで調べた情報によれば、この洋館は数十年前に発生した未解決の失踪事件と関係があるということでした。あかりは好奇心からその洋館に行ってみることにしました。
夜になると、あかりと友達は懐中電灯を持ち、洋館の前に立ちました。屋根は崩れ、窓は割れていましたが、その中にはどこか神秘的な魅力がありました。勇気を振り絞り、ドアを押し開けると、中はほこりだらけで放置されていました。
洋館の内部を探検していると、あかりは古い鏡を見つけました。鏡のフレームは豪華でありながらも、ひびが入っていて不気味な雰囲気を醸し出していました。友達たちは鏡に近づくのをためらっていたが、あかりはその鏡に引き寄せられるように近づいてしまいました。
「怖いからやめようよ」と友達が言いましたが、あかりは無視して鏡をじっと見つめました。鏡の中に映るのは、自分の顔と周囲の朽ちた部屋だけでした。しかし、次の瞬間、鏡の中の自分の顔がゆっくりと笑い始めました。あかりは驚きと恐怖で体が硬直しました。鏡の中の顔は、不自然なほどに笑い続け、目が異様に光っていました。
「どうしたの?」友達が不安そうに声をかけましたが、あかりは答えられませんでした。鏡の中の顔が突然、暗い影のようなものに変わり、静かにささやき始めました。「来て… ここに来て…」
あかりは恐怖で立ちすくみながらも、鏡の中のささやきに引き込まれるように手を伸ばしました。その瞬間、冷たい手が鏡の中から伸び出し、あかりの手を掴みました。彼女は悲鳴を上げながら鏡から引き離そうとしましたが、手はさらに強く掴んできました。
友達があかりを引き離そうと必死に鏡から引っ張ると、あかりは突然、鏡の中に吸い込まれるような感覚に襲われました。彼女の目の前には、暗闇の中で無数の手が伸びてきて、彼女を引き込もうとするのが見えました。友達は叫びながらあかりを引き戻し、何とか鏡から離すことができました。
その後、あかりは鏡から離れ、恐怖で震えながらも洋館を出ることができました。友達たちはあかりを励ましながらも、鏡の中で何が起こったのかを知りたくてたまらない様子でした。しかし、あかりは鏡の中で見た恐怖を誰にも話すことができず、その後は鏡の話を避けるようになりました。
数日後、町の人々は洋館が完全に取り壊されているのを目にしました。その遺物の中に、一つだけ不気味な鏡が残っていました。それは、取り壊しの最中に見つかったもので、鏡の表面には「囁き続ける者がいる」と書かれていました。
それ以来、その鏡の話は町の伝説となり、人々はどんなに興味があっても絶対にその鏡に触れてはいけないという警告を守り続けています。ただ、誰もその鏡がどこに行ったのかを知らないのです。
鏡の中の囁きは今日もどこかで続いていると言われています。
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