怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

闇からの営業マン (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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田中健一は、東京都内に住む独身のサラリーマンだった。日々の仕事に追われ、帰宅後は自宅で静かに過ごすのが彼の楽しみだった。彼の生活は非常にシンプルで、玄関のチャイムが鳴っても宅配便以外は基本的に応じることはなかった。

ある晩、健一は仕事から帰宅し、リビングでリラックスしていた。テレビを見ながら軽く食事を済ませ、ふとソファに横になった。そのままうとうとしていると、突然玄関のチャイムが鳴った。

「こんな時間に誰だろう?」

時計を見ると、夜の8時を過ぎていた。普段なら無視するところだが、その日は何故か気が緩んでいたのか、健一は玄関へ向かいドアを開けた。

「こんばんは、田中様。」

玄関の外には、一人の営業マンが立っていた。黒いスーツに身を包み、手には黒いアタッシュケースを持っていた。彼の目はどこか不気味な輝きを放っており、健一は一瞬、言葉を失った。

「ええと、何かご用でしょうか?」

営業マンはにこやかに微笑みながら、「ちょっとお時間よろしいでしょうか?特別な商品をお見せしたいと思いまして」と言った。

普段なら断るところだが、その営業マンの異様な雰囲気に圧倒され、健一はつい「どうぞ」と答えてしまった。

営業マンは礼儀正しく玄関に一歩足を踏み入れ、リビングに案内された。彼はアタッシュケースを開け、中から一つの小さな箱を取り出した。

「こちらの商品は、未来を予知する能力を持つ特別なデバイスです。これを使えば、あなたの未来を知ることができます。」

健一はその言葉に驚き、箱の中身を見た。それは手のひらに収まるほどの大きさの金属製の装置で、中央には小さなスクリーンが付いていた。見た目はただのガジェットのようだったが、営業マンの言葉に不思議な魅力を感じた。

「本当に未来を予知できるんですか?」

営業マンは自信満々に頷いた。「はい、これは特別な技術で作られており、あなたの未来の出来事を映し出すことができます。ただし、この力を使うかどうかはあなた次第です。」

健一は興味をそそられ、その装置を手に取った。営業マンは続けて説明を始めた。

「使い方は簡単です。このボタンを押すだけで、あなたの未来の出来事がスクリーンに表示されます。ただし、注意点があります。未来を知ることは大きな責任を伴います。どんな未来が見えるかは分かりません。それでも使ってみますか?」

健一はしばらく考えたが、好奇心が勝り「試してみます」と答えた。営業マンは満足げに頷き、装置の使い方を詳細に説明した。そして、健一はその装置を購入することに決めた。

「では、私はこれで失礼します。良い未来が見えることをお祈りしています。」

営業マンはそう言って立ち去った。健一は装置を手に持ち、深呼吸をしてからボタンを押した。すると、スクリーンに映像が浮かび上がった。

最初に映し出されたのは、彼の職場の風景だった。上司や同僚たちが彼の周りに集まり、何かを話している様子が見えた。彼は耳を傾けた。

「田中君、最近のパフォーマンスが素晴らしい。君の頑張りに感謝している。」

その言葉に健一は驚きと喜びを感じた。彼は次の映像を期待してスクリーンを見つめ続けた。しかし、次に映し出されたのは、全く異なる光景だった。

暗い夜道を歩く自分の姿が映っていた。周囲には誰もいないはずの場所で、突然、背後から誰かに襲われるシーンが映し出された。健一は驚愕し、慌てて装置の電源を切った。

「これが本当に起こるのか?」

彼は恐怖に駆られ、未来の出来事が現実に起こるかどうかを考え始めた。次の日、彼は会社での評価が高まることを期待しながらも、夜道を歩く時の不安が頭から離れなかった。

その日の夜、健一は再び装置を手に取った。ボタンを押すと、今度は自宅のリビングが映し出された。彼はスクリーンに映る自分を見つめた。

すると、突然、リビングのドアが開き、あの営業マンが再び現れた。営業マンは無言で健一に近づき、何かを囁いた。その瞬間、画面は消え、装置は何も映さなくなった。

健一は恐怖と不安に包まれ、装置を手放した。何かがおかしい。あの営業マンは一体何者なのか?彼はその夜、一睡もできなかった。

翌日、健一は会社に行く前に警察に相談することにした。警察署で事情を話すと、警察官は慎重に対応してくれた。しかし、彼が持ってきた装置を調べても、特に異常は見つからなかった。

「この装置はただの電子機器のようです。特に危険なものではありません。」

健一は納得できないまま警察署を後にした。その日の仕事中も、未来の予知が現実になるかどうかが頭を離れなかった。彼は夜道を歩くことが怖くなり、早めにタクシーを使って帰宅した。

帰宅後、再び装置を手に取ることにした。恐怖を振り払うようにボタンを押すと、今度は自宅の玄関が映し出された。画面には、再びあの営業マンが立っていた。彼は健一の家のドアをノックし、微笑んでいた。

「田中様、お久しぶりです。新しい商品をお持ちしました。」

健一は心臓が止まりそうになりながら、玄関のドアを見つめた。すると、実際にチャイムが鳴り響いた。彼は恐怖に震えながらドアを開けた。

そこには、やはりあの営業マンが立っていた。彼の手には新たなアタッシュケースが握られていた。

「こんばんは、田中様。今日は更に特別な商品をお持ちしました。」

健一は言葉を失い、営業マンの言葉に耳を傾けることしかできなかった。営業マンはケースを開け、中から奇妙な装置を取り出した。

「これは、あなたの過去を知ることができるデバイスです。過去の出来事を見直すことで、未来を変える手助けができるかもしれません。」

健一はその言葉に引き込まれ、装置を受け取った。営業マンは満足げに微笑み、「どうぞ、お試しください」と言って立ち去った。

健一は再びリビングに戻り、新たな装置を手に取った。ボタンを押すと、スクリーンには彼の幼少期の映像が映し出された。彼は懐かしさと共に、次々と過去の出来事を見ていった。

すると、ある映像が彼の目に飛び込んできた。幼い頃、彼が両親と住んでいた家での出来事だった。彼は忘れていたが、その家には奇妙な男が頻繁に訪れていたことを思い出した。その男は、あの営業マンにそっくりだった。

「どうして…?」

健一は混乱し、装置を落とした。その瞬間、画面は消え、全てが暗闇に包まれた。

彼は自分の過去と未来が繋がっていることに気付き、恐怖に打ち震えた。あの営業マンは一体何者なのか?彼は自分の人生に何をもたらそうとしているのか?

健一はその後も、不思議な営業マンとの出会いに悩まされ続けた。彼の人生は大きく変わり始め、未来の予知と過去の再生が彼の運命を左右することになった。

そして、健一はその謎を解き明かすために、再びあの装置に向き合うことを決意した。彼は未来を変えるために、自分の力で運命に立ち向かう覚悟を決めたのだった。

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