怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

夜の訪問者 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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あれは夏の蒸し暑い夜だった。私は大学生で、一人暮らしをしていた。アパートは古く、築数十年の木造建築で、風が吹くと軋む音が聞こえることもあった。部屋は狭いが、家賃が安いので気に入っていた。日中は賑やかな街中にあるが、夜になると静まり返り、街灯の明かりだけが頼りになる場所だった。

その日も、いつものように課題を片付け、シャワーを浴びてベッドに入った。時計を見ると午前1時を過ぎていた。寝苦しい夜だったが、疲れもあってすぐに眠りに落ちた。

突然、部屋のドアを叩く音で目が覚めた。時計を見ると、午前3時だった。誰がこんな時間に訪ねてくるのか不思議に思いながら、寝ぼけ眼でドアに近づいた。

「誰だろう…」と小声で呟きながら、ドアの覗き穴を覗いた。しかし、外は真っ暗で何も見えなかった。再びドアを叩く音がした。今度は少し強く、急かされるような音だった。

「誰ですか?」と声をかけたが、返事はなかった。不安が募り、ドアチェーンを掛けたままドアを少しだけ開けてみた。すると、薄暗い廊下の先に人影が見えた。

「何か用ですか?」と再び尋ねたが、人影は動かず、沈黙を保っていた。その姿は異様に静かで、まるでそこに存在しないかのようだった。

急に冷たい風が吹き込んできて、背筋が凍るような感覚に襲われた。怖くなってドアを閉め、チェーンを外さずに鍵も掛け直した。再びベッドに戻ったが、どうにも気味が悪く、眠れないまま時間が過ぎた。

次の日、大家さんにそのことを話してみたが、「そんな時間に訪ねてくる人なんていないはずだよ」と言われた。不安は残ったままだったが、気のせいだろうと自分に言い聞かせて、その日の夜も寝ることにした。

また深夜、ドアを叩く音で目が覚めた。今度は午前2時だった。再び覗き穴を覗くと、やはり何も見えない。しかし、確かにそこには誰かがいるような気配があった。前夜の恐怖が蘇り、ドアを開ける勇気はなかった。

その夜もほとんど眠れず、次の日は大学でも集中できなかった。友人に話しても、「怖い話でも聞きすぎたんじゃない?」と笑われるだけだった。

3日目の夜、再びドアを叩く音で目が覚めた。今度は時計の針が午前3時を指していた。もう耐えられず、ドアの前で「誰ですか!」と叫んだ。しかし、返事はなかった。恐怖と苛立ちが混じり合い、覗き穴を覗きながらドアを思い切り叩き返した。

その瞬間、廊下の電灯が一瞬だけ点滅し、人影がはっきりと見えた。驚きと恐怖で体が動かず、ただその場に立ち尽くした。人影は再び沈黙し、その場から消えるように見えた。

朝になると、私は警察に相談することにした。警察は親切に話を聞いてくれたが、特に異常は見つからなかった。アパートの防犯カメラも確認したが、私の部屋の前には誰も映っていなかった。

それでも恐怖は消えず、次の夜も不安なままベッドに入った。午前3時、またドアを叩く音で目が覚めた。今度は何も考えず、ドアを開ける決心をした。チェーンを外し、ドアを開けると、そこには誰もいなかった。

ふと足元を見ると、小さな紙切れが落ちていた。拾い上げて見ると、そこには古びた文字で「助けて」と書かれていた。恐怖が頂点に達し、部屋に戻ってドアを閉めた。何が起こっているのか全く理解できず、ただ震えながら夜を過ごした。

次の日、再び大家さんに相談すると、「その部屋、実は昔から噂があってね…」と話し始めた。以前、その部屋に住んでいた女性が行方不明になり、未解決のままだったというのだ。彼女は毎晩誰かに追われていると感じていたらしく、何度も助けを求めていたという。

その話を聞いて、私は震え上がった。もしかしたら、毎晩訪れていたのはその女性の霊だったのかもしれない。彼女の恐怖と絶望が、この部屋に残っていたのだろうか。

私はお祓いをしてもらうことにした。地元の神社の神主さんに来てもらい、部屋全体を清めてもらった。不思議なことに、その後はドアを叩く音は聞こえなくなった。

しかし、あの時の恐怖は今でも忘れることができない。夜になると、ふとあのドアを叩く音が蘇ることがある。彼女の助けを求める古びた文字は、今でも私の心に深く刻まれている。

大学を卒業し、私は新しい場所で新しい生活を始めた。しかし、あの夏の夜の出来事は今でも私の記憶に鮮明に残っている。あの部屋で感じた恐怖と絶望は、一生消えることはないだろう。

今でも、夜中にドアが叩かれる音を聞くと、あの時の恐怖が蘇ることがある。それが現実だったのか、幻だったのかは分からない。しかし、あの女性の霊が助けを求めていたことだけは確かだと信じている。

彼女の魂が安らかに眠ることを願いながら、私は新しい生活を続けている。しかし、あの夏の夜の出来事は、私にとって忘れることのできない恐怖の記憶として、今でも心の中に生き続けている。

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