ある田舎の村に、古くから伝わる不気味な童謡がありました。その童謡は、「影の子供」というタイトルで、村の子供たちの間で囁かれていました。その歌はこう始まります。
影の子供がやってくる
暗い夜道で手を引くよ
光の消えた場所へと
君を連れていく
村の大人たちはこの童謡を忌み嫌い、子供たちに歌うことを禁じていました。しかし、子供たちは怖がりながらも、その歌を好奇心から口ずさんでいました。
ある晩、小学生の翔太君は友達と一緒に肝試しをすることになり、村の外れにある古い廃屋に行くことになりました。友達が「影の子供」を歌いながら廃屋に向かうと、翔太は不気味な感じがして歌うのをやめるように言いましたが、誰も聞き入れませんでした。
廃屋に着くと、友達はその歌をさらに大きな声で歌い始めました。その瞬間、周囲の気温が急に下がり、廃屋の中から奇妙な音が聞こえてきました。まるで誰かが歩くような足音が、薄暗い部屋の中に響いていました。
友達は怖がりながらも、好奇心から廃屋の中を探索し始めました。しかし、翔太はその場所から離れたくなり、一人で外に出ようとしました。その時、彼の背後で何かが動いたのを感じました。振り向くと、薄暗い影が彼に向かって伸びてくるのが見えました。
恐怖に駆られた翔太は必死で逃げ出しましたが、影は彼を追いかけてきました。彼が村に戻る途中、再び童謡の歌詞が頭の中に響きました。
影の子供がやってくる
暗い夜道で手を引くよ
光の消えた場所へと
君を連れていく
翔太は村の境界にある大きな木の下で力尽き、倒れ込んでしまいました。目の前がぼやけ始め、最後に見たのは、薄暗い影が自分の手を伸ばしてくる光景でした。
翌朝、村人たちは翔太が見つからないことに気づきました。彼の友達も、廃屋から戻ってこなかったのです。大人たちは捜索を始めましたが、見つかったのは村の境界にある大きな木の下で、翔太の持っていたお守りだけでした。
それ以来、村では「影の子供」の童謡が完全に禁じられました。子供たちもその歌を口ずさむことを恐れるようになりました。時々、夜になると、村の外れからかすかに童謡の歌声が聞こえてくることがありました。それは、影の子供たちが新たな友達を探しに来ているという噂が広まっていたからです。
村の人々は、その歌声が聞こえる夜には決して外に出ないようにし、家の中で静かに過ごすようになりました。そして、二度と「影の子供」の童謡を口ずさむことはありませんでした。
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