古本屋の一角に、埃をかぶった一冊の漫画があった。タイトルも作者名も判読不能。表紙の絵は、雨に濡れた街角で傘をさす少女の姿。どこか寂しげな表情が、通りすがりの客の目を引いた。
その漫画を手に取った男は、古本屋の店主から「これはうちのじいさんが昔集めてたものだ。内容はよくわからない」と言われた。男は興味本位で漫画を購入し、家に帰って読み始めた。
物語は、その少女が通う高校を舞台に展開していた。彼女はクラスで浮いた存在で、いつも一人ぼっち。ある日、彼女は古い図書館で見つけた一冊のノートに導かれ、奇妙な現象に巻き込まれていく。
ノートには、呪文のような文字がびっしり書き込まれていた。その文字を読んだ者は、現実と異なる世界を見ることができると言われている。少女は好奇心からノートの文字を声に出して読んでみた。すると、彼女の周囲の景色が歪み始め、現実と異なる奇妙な光景が現れた。
例えば、教室の黒板には、彼女の名前が血文字で書かれていたり、廊下の壁には、奇妙な形の影が蠢いていたりする。最初は単なる幻覚かと思ったが、現象は次第にエスカレートしていく。クラスメイトたちが、まるで人形のように動き出し、彼女を攻撃してきたり、学校全体が歪んだ空間へと変貌したりする。
少女はノートの呪いを解こうと試みるが、状況は悪化するばかり。恐怖に打ちひしがれながらも、彼女は必死に逃げる。しかし、どこへ行っても、その奇妙な現象から逃れることはできなかった。
一方、漫画を読んでいた男は、物語が進むにつれて、次第に不気味な感覚に襲われてきた。まるで、漫画の世界に自分が引きずり込まれていくような感覚だ。彼は、漫画のページをめくるたびに、背中に冷気が走り、心臓がドキドキと鳴り響くのを感じた。
そして、ついに物語はクライマックスを迎える。少女は、ノートの呪いの源である場所へと辿り着く。それは、学校の地下に隠された、古い祭壇だった。祭壇には、無数の呪符が貼られ、中央には、少女の顔が描かれた絵が飾られていた。
少女は、最後の力を振り絞って、祭壇に近づき、絵を破り捨てた。その瞬間、周囲の空間が震え、奇妙な現象は全て消え去った。少女は解放された安堵感を感じると同時に、深い疲労感に襲われ、意識を失った。
漫画を読んでいた男も、同時に意識を失った。目が覚めると、彼は自分の部屋にいた。しかし、部屋の空気はいつもとどこか違っていた。彼は、漫画を手に取り、もう一度表紙を見た。すると、表紙の絵の少女が、彼の方を見て微笑んでいるように見えた。
男は、恐怖と好奇心の間で揺れ動きながら、漫画をゆっくりと閉じ、本棚にしまった。それからというもの、男は夜になると、その漫画のことが気になって眠れなくなった。彼は、あの漫画の世界が本当に存在したのか、それとも単なる夢だったのか、自分自身に問いかけ続けた。
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