怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

川を渡る (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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私の家の近くには川がある。それは、渡れない川なのである。

家からまっすぐ歩いていくと、川岸の道へと出る。その川は特に深くない。普通ならば簡単に歩いて渡れるはずだ。だが、この川は普通の川ではない。川岸を少し歩き、川へおりて渡ろうとすると、川の半分あたりで突然場面がパッと変わってしまう。そして私は川岸の道の入り口へと戻されてしまうのである。

ある日、私はその川岸の道を歩いていた。途中で橋を見つけた。もしかしたら橋の上からなら川を渡れるのではないかと思い、橋を歩き始めた。しかし、橋の真ん中あたりに差し掛かったところで、やはり場面がパッと変わり、川岸の道の入り口へ戻されてしまった。

次は、川岸の道をひたすら歩いてみることにした。だいぶ歩いたところで、見えない壁にぶつかった。ぶつかったというより、進もうとすると壁があるかのように進めなくなる。何とも奇妙な現象であった。

しばらくして、街中にアップデートされたとの噂が広まった。ニュースでもその話題が取り上げられ、どうやら行けるエリアが増えたらしいという情報が流れていた。私はそのニュースを聞き、もしかしたら川を渡れるかもしれないと思い立った。

川岸の道へ行き、川へおりて再び川を渡り始めた。いつものように真ん中あたりに差し掛かる。いつもこの辺りで戻されるのだが、今回は違った。希望を持って足を進めると、進めた。さらにもう一歩、進めた。そして遂に川を渡り切った。

川を渡った先には広い林が広がっていた。私はそのまま林の中を歩き続けた。だいぶ歩いたところで、林が途切れ、目の前に海が広がっていた。海だ。テレビや本で見たことはあったが、実際に見るのは初めてだった。

試しに海に入ろうとした。しかし、ここでも見えない壁にぶつかった。私はがっかりした。海に入るには次のアップデートを待たなければならないのか。

私は家に戻り、次のアップデートを心待ちにすることにした。果たして次のアップデートではどこまで行けるのだろうか。期待と不安を胸に、再び冒険の機会を待つ日々が続いた。

新しい冒険
数週間後、新たなアップデートのニュースが舞い込んできた。今度のアップデートでは海の向こう側にも行けるようになるという。私は興奮を抑えきれず、早速準備を整えた。

再び川を渡り、林を抜け、海岸へとたどり着いた。海に足を踏み入れると、今回は見えない壁はなかった。ゆっくりと海に入っていくと、水の冷たさが心地よかった。さらに奥へと進むと、海底が見えるほどの透明な水が広がっていた。

泳ぎ続けると、やがて小さな島が見えてきた。島に上陸すると、そこには誰もいない静かな砂浜が広がっていた。私はその美しさに感動し、しばらくその場に立ち尽くした。

島を探索していると、不思議な石碑が立っているのを見つけた。石碑には古い文字で「次の冒険は星の彼方へ」と刻まれていた。その言葉に胸が高鳴る。次のアップデートでは一体どこまで行けるのだろうか。新たな冒険の予感に胸を躍らせながら、私は家へと戻った。

このようにして、私は次々とアップデートされる世界で新たな冒険を楽しむことができた。毎回新しいエリアや未知の場所が追加される度に、胸を高鳴らせながらその探検を楽しんだ。そして、いつか星の彼方へと旅立つ日が来ることを夢見ながら、今日もまた川岸の道を歩いている。

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