怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

夢の中の再会 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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いつものように、マンションの玄関を開けると、そこには静けさだけが漂っていた。いつもの賑やかな子供たちの笑い声も、靴箱に並べられたカラフルな運動靴も、そこにはなかった。愛息の、元気な姿が目に浮かぶ。

数日前、いつもの風邪がなかなか治らず、とうとう入院することになった。医師からは「大事には至りません」と言われたものの、子供の熱が出ている姿を見るたびに、私の心はざわついていた。面会は禁止。病院の入り口で、子供に会いたい気持ちを抑え、踵を返す日々が続いている。

そんなある夜、眠りについた私は、不思議な夢を見た。そこは、広々とした草原。風は心地よく、太陽の光が温かい。そして、そこには息子がいた。いつものように笑顔で駆け寄ってくる息子に、私は思わず抱きしめそうになった。夢だとわかっていても、その温もりが、心の奥底からこみ上げてくる。

私たちは、草原を駆け回り、木に登り、虫を捕まえ、まるで子供の頃にタイムスリップしたかのように、一日中一緒に過ごした。夢の中とは思えないほどのリアルな感覚だった。

次の日、息子に電話をかけて、息子とテレビ電話をすることにした。画面に映し出された息子の顔は、少しやつれていたものの、いつもの笑顔を見せてくれた。

「パパ、昨日さ、すごい夢見たんだ」

そう切り出すと、息子は目を輝かせて話し始めた。

「パパと広い草原で遊んで、いっぱい笑ったんだ。パパが虫捕まえてくれたの。楽しかった!」

息子の言葉に、私は驚愕した。昨日の私の夢と、全く同じ内容だったからだ。

「へえ、そうだったね。パパも、まさしく同じ夢を見たんだよ」

私は、息子に昨日の夢の続きを話した。すると、不思議なことに、息子は私の話を遮り、こう言った。

「そっからさ、パパと二人で大きな木に登って、遠くの街並みを見下ろしたんだ。パパが『大きくなったら、あんな高いビルも建てられるかな』って言ったの」

息子の言葉に、私は言葉を失った。昨日の夢で、私は息子にそう言ったのだ。

「すごいな。まるで一緒に体験したみたいだ」

私たちは、しばらくの間、昨日の夢について話し合った。夢の中で感じた温かさ、楽しさ、そして不思議な一体感。それは、現実には叶わない、特別な時間だった。

数日後、息子は無事に退院することができた。再び、我が家のリビングには、子供たちの笑い声が響き渡る。息子は、私にこう言った。

「パパ、また一緒に夢を見ようね」

私は、息子を抱きしめ、そう約束した。

あの夜、見た夢は、決してただの夢ではなかったのかもしれない。もしかしたら、遠く離れていても、心は繋がっているのかもしれない。

それからというもの、私と息子は同じ夢を見ることはなかった。しかし、あの夢の温かさは、私の心に深く刻み込まれている。そして、いつかまた、息子と不思議な夢を見ることができることを、私は密かに願っている。

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