ある寒い冬の夜、田舎の小さな村に住む佐藤一家は、家族で夜遅くまでテレビを見ていました。その日は特に寒く、外では雪がしんしんと降り続けていました。窓の外は真っ暗で、時折吹く冷たい風が窓ガラスを叩きつける音が、家の中にも響いていました。
佐藤一家はその夜、久しぶりに家族揃って過ごすことができ、暖かい夕食を囲んで楽しいひとときを過ごしていました。父親の一郎、母親の美咲、そして高校生の娘、恵美は、笑顔を絶やすことなく談笑していました。
夜も更け、そろそろ寝る時間だということで、家族はそれぞれの部屋に戻り、眠りにつこうとしていました。恵美は自分の部屋に入り、ベッドに入る前にスマホをいじっていました。窓の外を見ると、相変わらず雪が降り続けており、真っ白な世界が広がっていました。
すると、恵美のスマホに一通のメッセージが届きました。見知らぬ番号からのもので、「外に出て」とだけ書かれていました。不思議に思った恵美は、そのメッセージを無視し、ベッドに入ろうとしました。しかし、またすぐに同じ番号からメッセージが届きました。「外に出て、今すぐに」と書かれていました。
さすがに気味が悪くなった恵美は、両親の部屋に行き、このことを話しました。父親の一郎は、何かの悪戯だろうと考え、気にしないようにと娘をなだめました。美咲も同じように考え、早く寝るように促しました。
しかし、その夜、恵美はなかなか眠れず、再びスマホを手に取りました。同じ番号からのメッセージが何通も届いており、「外に出なければ、あなたの家族に危険が及ぶ」とまで書かれていました。
恐怖に駆られた恵美は、ついに外に出ることを決心しました。パジャマの上にコートを羽織り、静かに家を出ました。外は一面の銀世界で、寒さが骨身にしみました。恵美はメッセージの送り主が誰なのかを確かめるために、暗い道を進みました。
村の中心部に差し掛かると、誰かの人影が見えました。恵美はその人影に近づいていきましたが、それは見知らぬ男でした。男はにやりと笑い、恵美に近づいてきました。「やっと来たね」と言いました。
恵美はその男の異様な雰囲気に恐怖を感じ、すぐに逃げ出しました。しかし、雪道で足を滑らせ、転んでしまいました。男はゆっくりと近づいてきて、恵美に手を差し伸べました。「逃げても無駄だよ」と冷たい声で言いました。
その瞬間、村の中の古い教会の鐘が深夜を告げる音が響き渡りました。男は一瞬、驚いたように周りを見渡し、急に姿を消しました。恵美は起き上がり、全速力で家に向かって走りました。家にたどり着くと、両親が心配そうに待っていました。恵美が事情を話すと、一郎はすぐに警察に連絡しました。
警察が来て話を聞くと、その男は村の昔話に登場する幽霊だと言われました。数百年前、その村で罪を犯した男が処刑され、その怨霊が今でも村を彷徨っているという話でした。男の幽霊は毎年、寒い冬の夜に現れ、若い娘を狙っていたのです。
その夜の出来事以来、恵美は夜遅くに外に出ることはなくなりました。家族もそのことを重く受け止め、村の古い言い伝えを改めて信じるようになりました。そして、その年の冬が過ぎ去るまで、佐藤一家は毎晩、全員揃って過ごすようにしました。
その後、村ではその男の幽霊を見ることはなくなりましたが、寒い冬の夜には、誰もが早く家に帰り、家族と共に過ごすことを心掛けるようになりました。村人たちはこの話を代々語り継ぎ、後世に教訓として伝えていくことを誓いました。
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