私の家の裏山には、人知れず湧き出る水源がある。その存在を知っているのは私だけ。山道も整備されておらず、他の人が訪れることはない。この湧水は、他の水とは一線を画す特別な味わいを持っていた。私はこの水を「神秘の水」と呼び、日々の生活に取り入れていた。
初めてこの湧水を発見したのは、小学生の頃のことだ。夏休みのある日、家の裏山を探検していた私は、木々の間からキラキラと光る水面を見つけた。その美しさに魅了され、手で掬って飲んでみたところ、信じられないほど美味しかった。その日以来、私はこの湧水を日常的に利用するようになった。
ある日、私はその湧水を使ってお米を炊いてみた。湧水で炊いたお米は、まるで宝石のように輝き、一口食べると口の中でふわりと広がる甘みと香りが感じられた。家族もその美味しさに驚き、それ以来、我が家の食卓には湧水が欠かせない存在となった。
湧水の不思議な力は、お米だけに留まらなかった。お味噌汁を作る際にこの水を使うと、具材の味が際立ち、一層美味しくなるのだ。まるで、料理がその水に触れることで生命力を取り戻したかのようだった。
しかし、この湧水にはさらに驚くべき力があった。ある日、私は体調を崩し、高熱にうなされていた。どんな薬を飲んでも改善しなかったが、母が湧水で作ったお粥を食べると、みるみるうちに体が楽になっていった。翌朝には、すっかり元気を取り戻していたのだ。この経験から、私はこの水に癒しの力があることを確信した。
ある晩、湧水のもとを訪れた私は、月明かりに照らされた水面に異変を見つけた。水が淡い光を放っているのだ。その光に誘われるように、水面を覗き込むと、水の底に小さな石の祠が見えた。私はその祠を手に取り、家に持ち帰った。
翌日、祠を詳しく調べるために掃除をしていると、中から古い巻物が出てきた。その巻物には、この湧水が「命の水」と呼ばれ、古来より人々を癒し、命を育む力を持つと記されていた。私はこの発見に驚きつつも、自分がその守護者であることを誇りに思った。
それからというもの、私は湧水をより一層大切に扱うようになった。この水を使って料理をするたびに、私はその恵みに感謝し、自分の健康と家族の幸せを祈った。
ある日、親友が突然家に訪ねてきた。彼は仕事のストレスで疲れ果て、心身ともにボロボロだった。親友の彼ならばと思い、私は彼を裏山に連れて行き、湧水を飲ませた。すると、彼の顔色がみるみる良くなり、次第に笑顔が戻ってきた。その日以来、彼は時折私の家を訪れ、この水で心と体を癒していった。
しかし、この湧水の存在を他の人に教えることはなかった。それは、神秘の力が失われることを恐れたからだ。私はこの水を秘密にし続けることが、自分に課せられた使命だと感じていた。
時が経つにつれ、私の家族と親友は湧水の恩恵を受けて幸せに暮らしていた。湧水はまるで魔法のように、私たちの生活を豊かにし続けた。
ある日、私はふと考えた。この湧水がどれほどの奇跡をもたらしてくれたのかを。私の家族が健康でいられるのも、この水のおかげだし、親友が幸せに暮らしているのも、この水の力があってこそだ。
私は湧水に感謝の気持ちを込め、毎日その場所を訪れて祈りを捧げた。祠を守り、この水を未来へと受け継ぐことを誓った。
こうして、私の家の裏山にある湧水は、誰にも知られることなく、その神秘的な力を持ち続けた。私たちの生活に深い癒しと幸せをもたらし続ける、その不思議な水は、これからも静かに湧き続けるのだろう。
新品価格 |
価格:2100円 |
マンガをお得に読むならマンガBANGブックス 40%ポイント還元中
1冊115円のDMMコミックレンタル!
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |