私は親友のたくみがもうすぐ亡くなるという知らせを受けた。彼は重い病にかかり、病院のベッドで過ごしている。私たちは共に映画を愛し、多くの時間を映画館で過ごした仲だった。しかし、最近では仕事や家庭の都合で映画館に行くことも少なくなっていた。彼の最後の時を迎える前に一目会いたいと思ったが、私は咳が止まらない状況だった。そのような状況では重い病の親友への面会に行けない。
体は元気だったが、先日流行り病にかかり、それ以来、病は治ったものの咳だけがしつこく残っていた。医者に診てもらい、薬を飲んでも効果はなく、日に日に焦燥感が募るばかりだった。そんなある日、インターネットで偶然見つけた情報に目が留まった。それは、私の家の近くに咳を鎮める力を持つ祠があるという話だった。
半信半疑ながらも、私はその祠に行くことを決意した。スマホのマップを片手に、森の中へと足を踏み入れた。地図上では近くに見えたが、実際には小さな獣道のような道を進まなければならず、かなりの時間を要した。やがて、木々の間にひっそりと佇む小さな祠が見えてきた。
祠の前で簡単なお供え物をし、目をつむりお祈りを捧げた。心の中で「どうか咳を鎮めてください、親友に最後に会わせてください」と強く念じた。すると、ふっと喉に冷たいものが通ったような気がした。その瞬間、目を開けると、私は映画館の前に立っていた。
「悪い、遅れて」と聞き覚えのある声が耳に入った。振り返ると、そこには元気な姿のたくみがいた。私は一瞬状況が飲み込めずきょとんとしていたが、彼はにっこりと笑い、「俺のおすすめの映画見ようぜ」と言って、私を映画館の中へと誘った。
映画館の暗闇の中で、私たちは並んで座り、スクリーンに映し出される映画に見入った。たくみのおすすめだけあって、その映画は非常に面白く、私たちはまるで昔に戻ったかのように映画の話題で盛り上がった。
映画が終わり、外に出ると、たくみは私に向かって微笑みながら「ありがとう」と言った。私は何故か涙が溢れ出て、その場に立ち尽くした。気がつくと、私は再び祠の前に立っていた。祠の前での出来事が夢だったのか現実だったのか、曖昧なまま私はその場を後にした。
驚くことに、その後私の咳はすっかり止まっていた。まるで何事もなかったかのように。病院に駆けつけると、たくみはまだ意識があり、私を待っていた。彼は私の顔を見ると、安心したように微笑みを浮かべた。
「お前の顔を見られてよかった」と、彼は弱々しく言った。私は彼の手を握りしめ、涙を堪えながら「俺も、お前と会えてよかった」と返した。私たちはそのまましばらく会話を続け、彼が眠りにつくまで側にいた。
数日後、たくみは静かに息を引き取った。彼の最後の瞬間に立ち会えたことに感謝しながら、私はあの不思議な体験が彼からの最後の贈り物だったのではないかと思った。
祠での出来事が現実か夢かはもうどうでもよかった。ただ、あの瞬間が私たちの友情の証として心に深く刻まれた。それ以来、私は毎年たくみの命日にあの祠を訪れ、祠に感謝の意を伝えている。たくみとの絆は、あの不思議な体験を通して、これからも永遠に続いていくと信じている。
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