小学生のタケルは、友人のリョウタ、ミカと一緒に、夏休みの冒険の場として近所の山に秘密基地を作ることにした。山は学校からも家からも離れており、親たちからは行かないようにと厳しく言われていた場所だ。しかし、子供たちにとってそれはかえって魅力的な場所だった。
基地の場所を決めるために山の奥へと進むと、リョウタが突然「あそこにしよう!」と指を指した。そこには古い祠があり、苔むした石の階段が続いていた。祠の周りは木々が鬱蒼と茂り、昼間でも薄暗い。タケルは一瞬ためらったが、リョウタとミカが楽しそうに進んでいくのを見て、仕方なく後に続いた。
祠の前に到着すると、リョウタが石の階段を駆け上がり、扉を開けた。中には古い木の箱が置かれており、その上に巻物が載っていた。リョウタが巻物を広げると、奇妙な文字がびっしりと書かれていた。ミカは「これって何だろう?」と不思議そうに呟いた。
タケルは何か嫌な予感がして「戻ろうよ」と言ったが、リョウタは「こんなの見つけたら探検家になった気分だぜ」と興奮気味に言い、巻物を持って帰ることに決めた。
その夜、タケルの家で3人は巻物を解読しようとした。文字は全く読めなかったが、リョウタが「これ、呪文みたいだな」と冗談交じりに言い、適当に音読し始めた。その瞬間、部屋の中が急に寒くなり、電気が一瞬暗くなった。ミカが「なんか怖いよ」と言ったが、リョウタは「ただの偶然だろ」と笑った。
翌日、3人は再び山へ向かった。祠の周りは以前よりもさらに暗く、静かだった。タケルは「本当にここで秘密基地を作るの?」と不安げに聞いたが、リョウタは「ここが一番いいんだって」と言い張った。
その時、突然ミカが「見て!」と叫んだ。祠の裏から人影が見えたのだ。タケルが「誰かいるの?」と声をかけたが返事はなかった。リョウタは「ただの影だろ」と言い、祠の裏に回ったが、そこには誰もいなかった。
気味が悪くなった3人は、その日は早々に帰ることにした。しかし、その晩、タケルは奇妙な夢を見た。夢の中で彼は祠の前に立っており、祠の扉がゆっくりと開いていく。中からは黒い霧が漂い、その中から無数の手が伸びてきた。タケルは逃げようとしたが、足が動かず、手が彼を掴む感触がリアルに伝わってきた。
目が覚めた時、タケルは冷や汗をかいていた。朝になってもその夢のことが頭から離れず、学校でも友人たちに話した。しかし、リョウタもミカもそんな夢は見ておらず、「ただの悪夢だよ」と言って気にしなかった。
次の日、タケルは一人で山に向かった。祠のことがどうしても気になり、確かめたかったのだ。祠の前に立つと、冷たい風が吹き抜け、背筋が寒くなった。タケルは意を決して祠の扉を開けた。
中にはあの巻物が戻っていた。タケルは恐る恐る巻物を広げたが、文字は変わっていなかった。しかし、突然背後から冷たい手が肩に触れた。振り返ると、そこには見知らぬ女性が立っていた。彼女は古い和服を着ており、顔色は青白かった。タケルは叫び声を上げて逃げ出した。
家に帰ってから、タケルはその出来事を両親に話した。両親は驚き、タケルを連れて近くの寺に行き、住職に相談した。住職は話を聞いて顔を曇らせ、「その山は昔から何かがあると噂されている場所だ」と言った。祠には封印された何かがあり、それが解かれたのかもしれない、と住職は続けた。
住職はお祓いをするために山へ同行し、祠の前で儀式を行った。その間、タケルは奇妙な感覚に襲われ、背中に冷たい汗をかいた。儀式が終わると、住職は「これで大丈夫だ」と言ったが、タケルの心は晴れなかった。
それ以来、タケルは祠の夢を見なくなったが、リョウタとミカとは距離を置くようになった。二人もまた、何かを感じていたのかもしれない。秘密基地の話は二度としなくなり、山にも近づかなくなった。
夏休みの終わりに、タケルはふと、あの巻物のことを思い出した。住職が持ち帰ったのだろうか、それともまだ祠の中にあるのだろうか。確かめる勇気はなかったが、あの巻物が何であったのかを知りたいという気持ちが心のどこかに残っていた。
そして、数年後、タケルが中学生になった時、再びあの山に行くことを決意した。その時、彼は一人ではなく、もっと多くの友人たちと一緒に行くつもりだった。しかし、その計画は実行されることはなかった。なぜなら、その年の秋、山が大規模な土砂崩れに見舞われ、祠が跡形もなく消え去ったからだ。
タケルはそれを聞いた時、何かが終わったような気がした。同時に、あの巻物の秘密が永遠に封じられたことに安堵の気持ちも感じた。
それからさらに時が経ち、タケルは大人になり、あの夏の日々を懐かしく思い出すことがあった。友人たちと過ごした冒険の日々、その中で体験した奇妙な出来事。しかし、祠のことはもう語られることはなく、タケルの心の中にだけひっそりと残り続けた。
彼はその後も何度か故郷に戻り、山の跡地を訪れたが、そこにはただ新しい木々が茂り、昔の面影は何一つ残っていなかった。ただ、風が吹く度に、あの祠の冷たい空気を思い出すことがあった。
その風に乗って、あの巻物の秘密が今もどこかで囁かれているのかもしれない、とタケルは時折考えるのだった。
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