怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

恐怖のプリンター (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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冴子さんは専業主婦。毎日、家事と育児に追われる日々を送っていた。最近、少しだけ気になることがあった。それは、家のプリンターが、まるで意思を持っているかのように、勝手に動き出すことだ。

最初は、子供がいたずらしたのかと思った。しかし、子供たちは、プリンターに触ることを禁止されていたので、そんなはずはない。夫も、仕事から疲れて帰ってきて、すぐに寝てしまうので、まさか彼が夜中にこっそり印刷しているなんて、考えもつかなかった。

ある日、冴子さんは、いつものように家事をしていた。ふと、物音がしたような気がして、リビングへと足を運ぶ。すると、そこには、プリンターから紙が排出される音が聞こえてきた。

「また、勝手に動いている…」

冴子さんは、不審に思いながら、プリンターへと近づいた。そして、排出されたばかりの紙を見て、言葉を失った。

紙には、見慣れない文字がびっしりと書き込まれていた。

「これは…呪い?」

冴子さんは、背筋が凍りついた。

その日から、冴子さんは、ますます不安になった。

夜になると、寝室で寝ていると、リビングから物音が聞こえる。

「また、プリンターが動いている…」

冴子さんは、恐怖に震えながら、布団から出ることができなかった。

ある日、冴子さんは、勇気を振り絞って、その紙を近所の神社の宮司に見せた。

宮司は、紙をじっと見て、眉をひそめた。

「これは…ただの落書きではありませんね。何かの力が働いているようです」

宮司は、そう言うと、お祓いを勧めてきた。

冴子さんは、藁をもすがる思いで、宮司の言う通り、お祓いをしてもらうことにした。

しかし、お祓いをした後も、プリンターは、相変わらず勝手に動き続けた。

そして、ある日、ついに事件が起こった。

夜中に、冴子さんは、激しい頭痛に襲われた。

そして、意識が朦朧とする中、何かが自分の体を押さえつけているような感覚を感じた。

「助けて…」

冴子さんは、必死に叫んだが、誰も応えてくれない。

そして、気がついた時には、病院のベッドに横たわっていた。

医師によると、冴子さんは、過度のストレスから体調を崩したとのことだった。

しかし、冴子さんは、自分には、もっと恐ろしいことが起こっていると確信していた。

退院後、冴子さんは、再び、その紙を手に取った。

そして、じっくりと文字を読み込んでいくうちに、あることに気がついた。

紙に書かれている文字は、少しずつ変化している。

最初は、意味の分からない文字ばかりだったのが、だんだんと、人間の言葉に近づいてきているような気がした。

そして、ある日、紙には、こんな言葉が書かれていた。

「私は、この家に住むつもりだ」

冴子さんは、恐怖で体が震えた。

そして、その夜、ついに、恐ろしいことが起こった。

冴子さんは、恐怖に震えながら、部屋の隅に追いやられていた。プリンターから、不気味な音が響き渡り、部屋全体が陰鬱な雰囲気に包まれていた。

「お願いだから、やめて…」

冴子さんは、必死に目を閉じ、何も聞こえないふりをしていた。しかし、その願いも虚しく、プリンターから吐き出される紙は増える一方だった。

やがて、部屋中が紙で埋め尽くされ、冴子さんは、呼吸をするのも困難になってきた。

「もう、だめだ…」

絶望感に打ちひしがれ、冴子さんは、意識を失いかけた。

その時、突然、部屋が明るくなった。

窓の外を見ると、朝日が差し込んでいた。

冴子さんは、ゆっくりと目を開け、辺りを見渡した。

すると、部屋には、昨日のような紙の山はなく、プリンターは、いつものように静かに置いてあった。

「これは…夢だったのか?」

冴子さんは、まだ現実感がなく、自分の顔を手で覆った。

しかし、手の感触は確かに現実のものであった。

恐る恐る、プリンターに近づいてみると、昨日の紙は見当たらなかった。

代わりに、プリンターの上には、一枚の紙が置かれていた。

紙には、美しい絵が描かれていた。

それは、家の庭に咲いているバラの花の絵だった。

冴子さんは、その絵を見て、心が安らぎを感じた。

そして、紙の裏には、こんな言葉が書かれていた。

「私は、ただ、あなたに絵を描きたかったのです。怖がらせてしまって、ごめんなさい。」

冴子さんは、その言葉を読んで、涙が溢れてきた。

一体、誰がこんなことをしたのか。

冴子さんは、一生その謎を解くことはできないかもしれない。

しかし、この出来事をきっかけに、冴子さんは、自分の人生を見つめ直すようになった。

そして、彼女は、この家で起こった不思議な出来事を、心の奥底にしまい込むことにした。

それからというもの、冴子さんの家は、以前のように静かで穏やかな場所に戻った。

そして、冴子さんは、毎日、庭のバラの花を眺めながら、穏やかな日々を送るようになった。

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