闇に棲む影　（怖い話　奇妙な話　不思議な話）

小さな村、深緑町。この村には古くからの伝説があり、その内容は誰もが恐れるほどのものであった。村人たちはその伝説を「闇に棲む影」と呼んでいた。伝説によれば、村の近くにある黒森には、夜になると人々の魂を喰らう恐ろしい影が現れるという。

夏の終わり、友人同士の田中、佐藤、鈴木の三人は、この伝説の真実を確かめるために黒森へと向かうことを決意した。彼らは高校最後の夏休みを過ごしており、都会の喧騒から離れたこの静かな村で過ごしていた。三人は冒険心に満ちていたが、同時に心のどこかで不安も抱えていた。

夜の帳が降りると、三人は懐中電灯を手に黒森へと足を踏み入れた。森の中は静寂そのもので、彼らの足音だけが響いていた。木々はまるで生きているかのように揺れ、風の音が不気味に耳元で囁く。しばらく進むと、田中が突然立ち止まった。

「みんな、聞いたか？」田中の声は震えていた。

「何も聞こえなかったけど？」佐藤が不思議そうに答えた。

「いや、確かに何か…人の声が聞こえたんだ。あっちから。」田中は指を森の奥へと向けた。

鈴木は笑いながら言った。「おいおい、怖がらせるなよ。そんなの幻聴だろ。」

しかし、田中の顔には確信があった。三人は更に奥へと進んだ。その時、突然彼らの前に古びた祠が現れた。苔むした石碑には、かすれた文字が刻まれていたが、誰もその意味を理解できなかった。

「これが…伝説の祠か？」佐藤は声を潜めた。

「たぶん…でも、なんでこんなところに…？」鈴木が答えると、その時だった。背後から冷たい風が吹き、彼らの懐中電灯が一斉に消えた。

「何だ…！？電池が切れたのか？」田中は懐中電灯を叩いたが、光は戻らなかった。

その瞬間、彼らの周りには闇が広がり、冷たい手が彼らの身体を掴む感覚がした。三人は叫び声を上げたが、声はまるで吸い込まれるように消えていった。闇の中で、何かが動いている気配がした。それは確かに「影」だった。影は形を変え、まるで生きているかのように彼らに迫ってきた。

「逃げろ…！」鈴木が叫び、三人は必死に走り出した。しかし、影は彼らを追い続け、冷たい手が次々と彼らを掴む。

「助けて…！」田中が叫んだが、その声は闇に飲まれた。彼らの視界は次第にぼやけ、意識が遠のいていく。

翌朝、村人たちは黒森の入り口で三人の友人を見つけた。彼らは倒れ込んでおり、意識はあったが恐怖に怯えた表情を浮かべていた。何が起こったのか尋ねても、三人は震えながら口を閉ざすばかりだった。彼らの記憶には、ただ「影」との遭遇だけが残されていた。

それ以来、村人たちはさらに黒森を避けるようになった。伝説の「闇に棲む影」は再び語り継がれることとなり、誰もがその存在を信じるようになった。そして、黒森は二度と踏み入れてはならない禁忌の場所となったのだった。

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