夏休み。太陽がギラギラと照りつける中、太郎は友だちの健太と大輔を連れて、近所の廃屋へと足を向けた。
「絶対何かあるぜ!」
健太が興奮気味に言う。大輔は少し不安げな顔をしているが、冒険心を抑えきれずに太郎についてきた。
この廃屋は、昔、この町で一番の評判だった老夫婦が住んでいた家だ。老夫婦が亡くなってから、誰も住まなくなったまま放置されていた。子供たちの間では、この家は「幽霊屋敷」と呼ばれ、怖い噂がたくさん広まっていた。
「俺、ちょっと怖いんだけど…」
大輔が弱気な声で呟く。
「大丈夫だよ。一緒にいれば怖くない!」
太郎は大輔の肩を叩いて励ます。
廃屋は、外から見るよりもずっと薄暗く、蜘蛛の巣が張り巡らされていた。窓ガラスは割れており、風鈴がぶら下がっているはずの軒下からは、ひび割れた陶器のかけらがぶら下がっていた。
「うわっ!」
突然、健太が悲鳴を上げた。古い本棚が倒れ、たくさんの本が床に散らばっていたのだ。
「気をつけろよ!」
太郎は健太を助けながら、崩れかけた家の中を慎重に進んでいく。
「ちょっと、これ見て!」
大輔が、壁に古い人形を見つけた。その人形の目はぎょろりとこちらを見ているようで、太郎たちは思わず後ずさりした。
「この人形、なんか怖い…」
大輔が震えながら言う。
「ただの古い人形だよ」
太郎はそう言いながらも、少しだけ不安を感じていた。
しばらく探索を続けると、太郎たちは一部屋にたどり着いた。その部屋には、大きな鏡が立てかけられていた。
「この鏡、なんか変だ…」
健太が鏡に近づき、自分の顔を覗き込む。すると、鏡の中に映った自分の顔が、ゆっくりと歪み始めた。
「うわああああ!」
健太は悲鳴を上げて、部屋から飛び出した。太郎と大輔も驚き、部屋から飛び出す。
「何があったんだ?」
太郎が健太に尋ねる。
「鏡の中に、俺じゃない顔がいたんだよ!」
健太は顔を真っ白にして言う。
太郎と大輔は、もう一度その部屋に戻って鏡を見てみたが、何も異常は見られなかった。
「気のせいじゃないか?」
太郎がそう言うと、健太は少し安心した様子だった。
しかし、その夜、太郎は奇妙な夢を見た。夢の中で、太郎は廃屋の部屋に戻り、鏡の前に立っていた。鏡の中に映っていたのは、太郎ではなく、見知らぬ老人の顔だった。老人は太郎をじっと見つめ、何かを言いかけているようだった。
「うっ…」
太郎は恐怖のあまり、目を覚ました。
翌朝、太郎は健太と大輔に昨晩見た夢のことを話した。
「もしかして、あの廃屋には何かが住んでいるのかも…」
大輔が恐る恐る言った。
太郎たちは、二度とあの廃屋には近づかないと誓い合った。
それから数年後、太郎たちは大人になった。ある日、太郎はふと、子供の頃に冒険した廃屋のことを思い出した。そして、勇気を振り絞って、再びその場所を訪れてみた。
廃屋は、昔と変わらず荒れ果てていた。太郎は、子供たちの頃に見た人形や鏡を探してみたが、どこにも見つけることはできなかった。
「もう、何もないのか…」
太郎はそう呟きながら、廃屋を後にした。
しかし、太郎の心の中には、あの廃屋で体験した怖い思い出が、ずっと残っていた。
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