彼の名前は田中隆一。中堅規模のIT企業に勤める若手のサラリーマンで、その真面目さと仕事の能力から重要な案件を次々と任されていた。多忙な日々を送りながらも、田中はそれが会社のためになると信じ、懸命に働いていた。しかし、ある日、彼の運命を大きく変える出来事が訪れる。
会社のIT研究会での発表の仕事が田中に任された。これは社内で最新IT技術を研究し、その成果を発表するというものだった。田中は日々の顧客案件を優先しながらも、なんとか資料を作成し、発表準備を進めていた。しかし、発表前の資料レビューの場で、事務を担当している執行役員に激しく叱責された。「こんな資料ではだめだ、いままで何をしていたんだ」と怒鳴られ、挙句の果てに「こんな仕事をやるような奴は会社にいらない」と言われてしまった。
その言葉は、田中の心を深く傷つけ、彼の心はぽっきりと折れた。この出来事はすぐに社内で広まり、田中は会社を辞める決意をした。幸い、激務のために貯金は豊富にあり、それを投資に回していたのでお金には困っていなかった。
田中の突然の退職は会社に大混乱をもたらした。会社のエースが辞めるのだ。しかも、執行役員からの解雇通知に近い発言が原因だったため、周囲は引き止めたくても引き止められなかった。田中は引継ぎをしっかり行い、顧客にも挨拶を済ませて会社を去った。
会社を辞めた後、田中は毎日を楽しんだ。平日から家の近くで美味しいランチを食べ、平日のショッピングやプール、スーパー銭湯を満喫した。平日の安く空いている旅館にも旅行に出かけた。彼にとって世界はこんなにも楽しいものだったのかと驚きと喜びに満ち溢れていた。
そんなある日、田中はふとしたことで不思議な出来事に遭遇する。近所の公園で散歩をしていた時、一本の古びた大きな樹の下で見知らぬ老人と出会った。老人は白髪で長い髭を生やし、古びた和服を身にまとっていた。老人は田中を見るなり微笑み、話しかけてきた。
「お若いの、何か悩みを抱えているようだな」
田中は一瞬驚いたが、老人の優しい目に引かれて、自分のこれまでの経緯を話した。仕事での辛い経験、退職してからの楽しい日々、そして将来への不安も正直に打ち明けた。
老人は頷きながら話を聞き終えると、不思議な小箱を田中に差し出した。「これはお前に預けよう。この中には、お前が本当に望むものが入っている。だが、一つだけ注意しなければならない。決して欲張ってはいけない。欲望に飲み込まれれば、この箱はお前に災いをもたらすだろう」
田中はその小箱を受け取り、中を覗いてみた。すると、中には美しい翡翠の玉が一つ入っていた。老人は続けて言った。「この玉を使えば、お前の願いは一つだけ叶う。しかし、その願いは慎重に選ぶのだ」
田中はその夜、家に帰ってからも翡翠の玉を見つめながら悩んだ。一つだけ叶えられる願い。彼は何を望むべきか、長い時間をかけて考えた。最終的に彼は、心の中で一つの願いを決めた。
翌日、田中は再び公園に向かい、老人と会った場所に立った。そして、心の中で強く願いを込めた。「私の仕事が再び楽しくなりますように」その瞬間、翡翠の玉が淡い光を放ち、田中の手の中で消えていった。
その後、田中は突然新しい仕事のオファーを受け取った。それは彼のスキルを存分に活かせる、やりがいのある仕事だった。新しい職場での生活は順調で、彼は再び仕事に情熱を持つことができるようになった。
田中の心は満たされ、彼は新しい環境で充実した日々を過ごすことができた。しかし、彼は老人からの警告を忘れることはなかった。「欲望に飲み込まれないように」という言葉を胸に刻み、慎ましく生きることを誓ったのだ。
この奇妙な出来事は、田中にとって人生の転機となった。彼は新しい環境で再び仕事を楽しみ、人生の喜びを再発見することができたのである。
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