怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

不思議な木の実 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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彼はいつも通りの忙しいサラリーマンだった。毎日、同じ時間に起き、同じ電車に乗り、同じオフィスで働く。仕事は嫌いではないが、特別に楽しんでいるわけでもなかった。彼にとっては、ただの日常であり、同じことの繰り返しに過ぎなかった。

ある日、彼は地方都市への出張を命じられた。普段の慣れ親しんだ街を離れ、見知らぬ場所での数日間。仕事が終わり、夕方の街を少し散策してみようと彼は思った。歩き慣れない道を進んでいると、古びた看板が目に留まった。「骨董品・雑貨店」と書かれたその看板は、時代遅れのデザインで、周囲の現代的な建物とは対照的だった。

なぜか彼はその店に強く惹かれ、気がつけばドアを押して中に入っていた。店内は薄暗く、所狭しと並べられた古い物たちが彼を迎えた。壊れかけた時計、色褪せた写真、そして不思議な形をした小物たち。まるで時間が止まったかのようなその場所で、彼は一つの小さな鉢植えに目を奪われた。それはほんの数センチの小さな木が植えられた鉢だったが、その木にはどこか特別な魅力があった。

「それが気に入りましたか?」店の奥から現れた老店主が、優しい笑みを浮かべて声をかけた。彼は驚いて振り向いたが、何故か自然と「はい、この木をいただきます」と答えていた。

帰りの電車では、その小さな鉢植えが邪魔になるたびに、なぜこんなものを買ってしまったのだろうと少し後悔した。しかし、家に帰り、その木を窓辺に置くと、不思議な安心感が彼を包んだ。毎日仕事で疲れて帰ってきても、その木を眺めるだけで心が和んだ。

そしてある日、彼は驚くべきことに気づいた。木に小さな実がなっていたのだ。その実は、まるで小さな宝石のようにキラキラと輝き、彼を魅了した。彼はその実を手に取り、慎重に割ってみた。中から現れたのは、小さな紙片。それにはこう書かれていた。「次の一歩は勇気をもって踏み出せ。」

彼は何のことか分からなかったが、次の日、仕事で悩んでいた大きな決断を思い切って下すことにした。結果は大成功だった。

それ以来、その木は毎週のように新たな実をつけ、その度に彼は何かしらのメッセージを受け取るようになった。メッセージに従って行動するたびに、彼の人生は少しずつ変わっていった。昇進、出会い、新たな趣味。そして、何よりも彼自身が変わっていった。毎日のルーチンに縛られていた彼が、今では自由に、そして喜びを持って生きている。

ある日、彼は気がついた。木の成長が止まり、もう実がならなくなっていたことを。それでも彼は微笑んだ。今では、自分の道をしっかりと歩んでいるのだから。

その木は、まるで彼の人生のガイドであったかのように役割を果たし終えたのだ。彼はその木を大切にし、今でも窓辺に置いている。そして、ふとした時に、その木を眺めながら、これまでの変化を思い出し、静かに感謝するのだった。

こうして、彼の新しい日常が始まった。もう同じ繰り返しではない、彼だけの特別な日々が。

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