怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

不思議な自動販売機 (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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主人公は、都心の大手企業に勤める会社員。日々の忙しさに追われ、夜遅くまで残業が続く日々を過ごしていた。ある日の会社帰り、仕事でひどく疲れ果てた彼は、気分転換に普段は使わない駅で降り、ふらりと街を歩いてみることにした。
時間も遅いのになぜそのような気になったのか自分でも不思議だった。
それだけ、疲れていたのだろう。

その街は、都会の中にもかかわらず古びた建物が立ち並び、少し異様な雰囲気を醸し出していた。薄暗い通りを歩いていると、ぽつんと古い自動販売機が目に留まった。その自動販売機は、年季が入っていて、今にも壊れそうなほどボロボロだったが、なぜか明かりが灯っていた。

主人公はふと、その自動販売機に近づき、商品ラインナップを眺めてみた。そこには普通のジュースやスナックが並んでいるかと思いきや、奇妙な商品名が記されていた。

「過去を思い出せるコーヒー」「未来が垣間見えるキャンディ」「心の傷を癒すチョコレート」など、不思議な商品が並んでいる。彼はその中で「忘れられない人に会えるソーダ」に目が留まった。

主人公は、しばらくためらった後、昔の恋人を思い出しながらそのソーダを購入した。彼女とは、学生時代に出会い、深い絆で結ばれていたが、彼の仕事の忙しさとすれ違いが原因で、自然と別れてしまった。彼女のことは心の奥底でずっと引きずっていたが、時が経つにつれて次第に忘れ去られつつあった。

購入したソーダを手に取り、彼はその場で一口飲んでみた。すると、あたりの景色がぼんやりと変わり、気がつくと彼は学生時代に戻っていた。目の前には、懐かしいキャンパスと、あの頃と変わらない彼女の姿があった。

彼女は微笑んで、まるで昨日のことのように彼に話しかけてきた。「久しぶりだね。元気だった?」と。彼は何も言えず、ただ彼女の言葉に耳を傾けた。まるで時間が戻ったかのように、二人は楽しい時間を過ごし、懐かしい話に花を咲かせた。

しかし、ふと気づくと、彼はまた元の場所に戻っていた。古びた自動販売機の前に立ち尽くし、手には空になったソーダの缶が残っていた。彼女の姿はもうどこにもなかったが、彼の心には不思議と温かさが残っていた。

彼はその後も何度かその街を訪れてみたが、あの自動販売機はもう二度と見つからなかった。まるで幻だったかのように、街の風景は普通の都会の一角に戻っていた。

しかし、彼はその経験を忘れることはなかった。あの不思議なソーダは、彼にとって過去との決別と、前へ進むための一歩を与えてくれたのかもしれない。自動販売機が消えた後も、彼の心には大切な思い出として、彼女との再会のひとときが残り続けた。

そして彼は、これからの人生においても、その一瞬一瞬を大切に生きていこうと誓ったのだった。

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