怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

心霊スポット:山間のトンネル (怖い話 奇妙な話 不思議な話)

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これは、私が社会人になったばかりの頃、友人たちと心霊スポット巡りをした時の話です。当時、私たちは好奇心旺盛で、よく夜中にドライブをしては心霊スポットに出かけていました。その中でも特に印象深い体験が、ある山間のトンネルで起こりました。

そのトンネルは、地元では有名な心霊スポットで、昔から多くの怪奇現象が報告されていました。トンネルの近くには古い墓地があり、そのトンネルを通過する際に霊を目撃したり、不思議な音を聞いたりする人が後を絶たないという噂が広まっていました。私たちは、あえてそのトンネルに行こうと決め、夏の夜遅くに車を走らせました。

山道を登り、トンネルに近づくにつれて、車内の雰囲気が次第に重くなっていくのを感じました。最初はワイワイと騒いでいた友人たちも、トンネルの入口が見えると、自然と口数が少なくなりました。トンネルは真っ暗で、ライトをつけてもその先がはっきりと見えないほどです。私たちは車を止め、トンネルの入口に立ちました。

「ここから歩いて中に入ろう」という提案に、一瞬躊躇しましたが、全員が怖いもの見たさで一致しており、ついにトンネルの中へと足を踏み入れることになりました。トンネル内はひんやりとしていて、湿った空気が肌にまとわりつきます。足音が反響し、どこからともなく滴る水の音が聞こえてきます。懐中電灯の明かりが頼りなく、周囲の壁に映し出された影が揺れるたびに、誰もが緊張で息を呑んでいました。

しばらく進んだところで、私は何か異様な気配を感じました。トンネルの出口がぼんやりと遠くに見え、その手前に白い霧のようなものが立ち込めているのがわかりました。私が「見て!」と声を上げると、他の友人たちも立ち止まり、霧に気づきました。最初は霧がかかっているだけだろうと思っていたのですが、それが次第に形を持ち始め、まるで人の姿を模しているかのように見えました。

その瞬間、全員が一斉に「戻ろう!」と叫び、駆け足でトンネルの入り口へと戻りました。しかし、走り出した途端、霧がどんどん濃くなり、まるで私たちを追いかけるように近づいてくるのです。恐怖心が頂点に達し、私は必死で走り続けましたが、トンネルの入り口はなかなか近づいてこないように感じました。

やっとの思いでトンネルを抜け出し、車にたどり着いた時、全員が息を切らしていました。車に乗り込んでドアを閉めた瞬間、背後で「バン!」という大きな音が響きました。振り返っても、そのような音がなるようなものはありませんでした。その瞬間、私たちは車を急発進させ、その場を一気に離れました。

帰り道は誰も一言も発しませんでした。皆、顔が青ざめ、体が震えていました。ようやく町に戻り、安心できる場所に着いた時、やっと口を開き始めました。「あの霧、一体何だったんだ?」「まさか本当に見えるとは思わなかった…」「あの音は何の音だったんだ・・・」と、全員が口々に話し始めました。あのトンネルで体験したことが現実だったのか、今でも時々疑うことがありますが、その夜の恐怖は決して忘れることができません。

その後、私はそのトンネルには二度と行っていませんが、時折、友人たちとその話をすることがあります。彼らもまた、あの体験を忘れられないと言います。あの夜見た霧が何だったのか、大きな音は何だったのかは、今となっては誰にも分かりません。ただ一つ言えるのは、あの場所には何か「見えない力」が存在していたということです。

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